「とにかく、身体を動かすことが好きでしたね。じっとしていられないというか、もういい加減にしろって言いたくなるほど、自分で自分を持て余している時期でした」
優作は平成元年に、そして平成最後の31年には、萩原が亡くなった。
「ショーケンさんと最後に会ったのは2015年だったと思います。彼がお店を貸し切りにしてくれて、二人でゆっくり色々な話をしたんですね。そのときは、また二人で何かやりたいね、というのが話のテーマでした」
水谷のもとには、『傷だらけの天使』の続編を作りたいという依頼が何度も届いていた。
「周りから色々お願いされたけど、続編をやったら、喜ばれるより、がっかりされるだろうと思ったんです。あのときの熱はあの時間だから持てたのであって、そこで完結しているんですよ。だから、どうしてもできないとお断わりしたんです」
放送から50年が過ぎ、22歳のときにギラギラと瞳を輝かせて乾亨を演じた彼は、72歳になった。
「優作ちゃんもそうですが、ふと岸田森さんやショーケンさんが生きていたら、どんな役者になっていただろうかと想像することがあります。彼らから様々なことを学んだし、僕は本当に人との出会いに恵まれたなと思います」
その眼差しは人柄を表わすかのように陰影が深く、愁いを帯びていた。
(第1回から読む)
【プロフィール】
水谷豊(みずたに・ゆたか)/1952年生まれ、北海道出身。代表作は『男たちの旅路』、『傷だらけの天使』、『熱中時代・教師編』など多数。2000年から主演するドラマ『相棒』は23シリーズも続く人気作に。
撮影/松田忠雄
※週刊ポスト2025年4月18・25日号