大事にしてもらえると思って柴犬を託したのに(写真提供/イメージマート)
男性は表情を変えず「みんなが集まる大きなパーティーなので」。にわかに信じがたい男性の話に、代表は「おまえ、何やってるんだ」と頭に血が上ったという。
「食っただと!」
その男性の国籍は不明だが、東南アジアのフィリピンやパラオでは古来より、お祝い事の御馳走として犬肉が食されていたらしく、ベトナムでは犬肉は幸運をもたらすと考えられているとの情報がある。またタイの一部の地域では、犬肉は貴重なたんぱく源で、夏バテに効くと考えられているらしい。
「これまでの犬たちは?」と問う代表に、男性は何食わぬ顔で「食べた」と自分の首を親指で切る真似をした。その男性に、代表は「食っただと!」と怒りしかなかったという。男性の話が事実なら、日本では動物虐待の罪に問われる犯罪行為で、決して許されることではない。
「ブリーダーの崩壊で行き場を失った犬たちを引き取って、これから幸せなるんだよと送り出したのに、冗談じゃない。まさか食べられていたなんて。この耳で聞くまで信じられなかった」という代表は、その男性が譲渡会に来るようになったきっかけを説明した。
「譲渡会をやっていた場所の隣に教会があって。教会だから、ホームレスとかビザが切れた不法滞在者とかを、タダで寝泊まりさせていたんですよ。男性も不法滞在だったようで仕事も住まいも金もなくなり、1か月ほど教会に寝泊まりしていたんでしょう。その頃は1か月に2回ほどそこで譲渡会を開いていて、それで知ったようです」。男性は教会で仕事も探してもらい、なんとか日本で生活できるようになったのだろう。
「お前にやる犬なんていない。帰れ! 2度と来るな」、代表は男性を追い帰し、出入り禁止にした。その後、男性が譲渡会に姿を現すことはなかったが、「後味が悪くてね。犬を食うなんて、それも俺の渡した犬たちを。犬食の話は知っているが、外国で行われている話だと思っていました。韓国では数年前、食用の犬たちの大規模飼養施設の環境が劣悪だと問題になった。一部では皮膚病や病気の犬でも食用していたという話も聞いていたが、犬食は禁止になった。日本でも戦時中は食べる物がなくて犬を食べたという話はあるが、今の日本で犬を食うやつがいるなんて」。
もしかすると類似のケースが日本のどこかで起こっている可能性もある。デヴィ夫人が掲げた政策も、案外、突拍子もないものではないのかもしれない。