まさか自分が特殊詐欺電話に騙されることになるとは(イメージ)
特殊詐欺と聞くと、被害は主に高齢者というイメージが長らくあった。ところが、最近の被害は全年齢にわたる傾向が強まっているという。手元にあるスマートフォンの番号表示を警察署に偽る手口が急拡大したことが注目を集めたが、近年、劇場型詐欺のシナリオに名称が使われたことで深刻な風評被害が発生している。ライターの宮添優氏が、その劇場型のシナリオによる手口と風評被害についてレポートする。
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末尾が「0110」で終わる、主に警察署で使用される電話番号を偽装表示し、ターゲットに架電をするパターンの特殊詐欺が増加傾向にある。事件を取材するキー局社会部デスクが解説する。
「”0110″の番号で着信する詐欺電話被害は、全国各地で今も発生しています。詐欺師はまず、警察署や警察関係者を装って被害者に電話で接触。あなたが捜査対象者だ、逮捕される可能性がある、示談金を支払えば逮捕されない、などありもしないことを告げられた被害者は、怖くなって金を払ってしまうのです」(社会部デスク)
もっとも、ありとあらゆるパターンの特殊詐欺事件の手口が報じられているので、この「警察になりすます」方式だけでは、ニュースを見ているであろう人たちをだませない。そこで、ターゲットをだますための「劇場型」の仕組みが用いられる。
「警察を装った電話の後、被害者救済機関や法的機関を名乗る別の人物が被害者に接触するのです。たとえば、電話口の人物に警察官だと言われても疑う人は疑います。ですが、不審感や不安感を少しでも抱いている被害者に、また別の人物が”救済”をちらつかせて接触すれば、多くの被害者がコロッと騙されてしまう。最近特に多く発生しているのが、警察だけでなく、携帯電話会社や被害者救済機関を名乗る人物が追加して登場する、劇場型の詐欺被害。一昨年ころから全国で相次いでいます」(社会部デスク)
かつて特殊詐欺が社会問題となり始めた頃、高齢の親世帯の電話に、トラブルに遭って取り乱した息子を装った電話がかかってくる、というのがよくある手口だった。その手法が報道などで広まり、息子を名乗るだけでは騙される人が減ってきたところ、今度は偽の息子だけでなく、そのトラブルの担当だと称する警察官や弁護士も電話口にあらわれるパターンが登場した。あらかじめシナリオを準備してターゲットに接触、複数の登場人物がストーリー仕立てで詐欺を行う「劇場型詐欺」だ。今回も、被害回復を持ちかける救済型へと変化している。