『続・続・最後から二番目の恋』でW主演を務める中井貴一と小泉今日子
フジテレビでスタートしたドラマ『続・続・最後から二番目の恋』が好評だ。人気作品の“続々編”が、“月9ドラマ”として復活した格好だ。なぜ好発進できたのか? コラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが解説する。
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14日に第1話が放送されたドラマ『続・続・最後から二番目の恋』(フジテレビ系)が視聴率・評判ともに最高のスタートを切りました。記事やSNSのコメント数と好意的な内容を見る限り、「今春トップの話題作」と言ってもいいでしょう。
同作は2012年冬に第1弾『最後から二番目の恋』が放送され、続く2014年春に第2弾『続・最後から二番目の恋』を放送。これで完結と思われていただけに今回の「11年ぶりの続々編」、しかも「初の月9ドラマ枠に移動」も含め、異例中の異例と言っていいでしょう。
「ドラマのシリーズ作は出オチのように右肩下がりの傾向がある」と言われる中、なぜ同作は変わらぬ支持を得ているのか。そして、なぜこれまでの木曜劇場(木曜22時台)から月9(月曜21時台)に移動したのか。いくつかの背景を掘り下げていきます。
出演俳優が実年齢の役を演じ続ける
まず、なぜ11年の時を経ての続々編でも変わらぬ支持を得られるのか。
支持のベースとなっているのは、愛すべき登場人物たちによる楽しげな日常とシビアな人生観。楽しさと寂しさ、笑いと涙、優しさと毒、期待と現実……これらの両面を穏やかながらもリアルに描くことで視聴者の共感を誘っています。実際、続々編の第1話でも、吉野千明(小泉今日子)の上司と長倉和平(中井貴一)の同期が亡くなって葬儀に参列し、死について考えさせられるシーンがありました。
なかでも視聴者の称賛を集め、作品への支持を決定づけたのは、第1シリーズの最終話クライマックス。主人公・千明の「寂しくない大人なんていない。人生はいつか終わってしまうことに大人は気づいているから」「だからこそ寂しさを埋めるために恋をするのをやめよう。恋がなくたって素敵な人生は絶対にあるはずだ」「人生って自分の未来に恋することなのかもしれない。自分の未来に恋していればきっと楽しく生きていける」「もしこれから誰かと恋をするとしたら、それを“最後の恋”と思うのはやめよう。次の恋は“最後から二番目の恋”だ。その方が人生はファンキーだ」というモノローグで視聴者の心をグッとつかんだ感がありました。
そして同作が支持を集めるポイントとして重要なのが、主要キャストの全員がほぼ実年齢通りの人物を演じていること。第1シリーズを45歳でスタートした千明は13年後の続々編では59歳になっていますが、演じる小泉今日子さん自身も59歳であり、役と俳優が視聴者と同じように時を刻んでいるのです。
もう1人の主人公・和平は続々編で63歳になっていますが、演じる中井貴一さんも63歳。視聴者は登場人物と俳優の人生をオーバーラップさせられるため、彼らの生き方や言葉にリアリティを感じるのでしょう。だからこそ今春の続々編では、「アラ還になった2人がどんな立場と心境で日々を過ごしているのか」が見どころになります。
キャスティングという点では、「主役の2人だけでなく元子役まで、シリーズを通してほぼ変わらないこと」「なかでも坂口憲二さんが前シリーズ以来11年ぶりに連ドラ本格復帰すること」も特筆すべきポイントの1つ。続々編ではその上で「新たな恋の相手候補に三浦友和さん、石田ひかりさんを起用」するなど視聴者をがっかりさせず、飽きさせないスタッフの配慮が光ります。