ウクライナ問題、イスラム国、香港デモ。世界の地殻変動の底流にあるのは、「国家とは何か?」という問いにほかならない。国家の定義を揺るがせたスコットランドの独立投票こそ否決に終わったが、その流れは今後強まると、大前研一氏は予想する。
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スコットランドがあのような民主的アプローチで住民投票を何の混乱もなく粛々と実施できた事実が、さすが紳士の国イギリス、と感心したものだ。一方、その後遺症で世界各地の独立運動が勢いづくのは間違いない。
実際、中国では北京政府が相当過敏になっており、スコットランドの住民投票に関する報道はタブーだった。香港の行政長官選挙制度改革を巡る民主派のデモや、新疆ウイグル自治区、内モンゴル自治区、チベット自治区の独立運動に影響を与えるのは必至だからである。
意外なところではハワイが独立運動に目覚め出している。もともと独立した王国だったのに力ずくでアメリカに併合された、という思いが一部の住民には強いので、再び独立国になって観光収入やアメリカ太平洋艦隊の司令部がある真珠湾の使用料などで自立していこう、という機運が盛り上がっているのだ。
世界で最も独立運動の火種をそこかしこに抱えているのはヨーロッパである。たとえば、デンマークでは本土から遠く離れた北大西洋のフェロー諸島、さらに北方のグリーンランドが独立気運を高めている。フェロー諸島は隣にあるアイスランドが独立国なのだから自分たちも、と意気込む。世界最大の島であるグリーンランドは、デンマークではなく海峡を隔てた対岸のカナダやアメリカと付き合って生きていきたいと考えている。
また、イタリアでは工業化が進んでいる裕福な北部のロンバルディア州、ヴェネト州、ピエモンテ州、エミリア=ロマーニャ州などで独立の声が絶えない。農業が中心で貧しい南部を切り離せ、それができないなら自分たちが出ていく、と昔から主張している。その動きはEUができて少し沈静化していたが、スコットランドに刺激を受けて再燃しつつある。