そうして日本とも縁のあるillyだが、他のコーヒーショップに比べると圧倒的に店舗数が少ない。
「illyは元来ロースターなので、最上の豆を届けるのがメイン。店舗展開を中心としたブランドとは、アプローチが異なるでしょうね。店舗によってデザインコンセプトは違いますが、例えば椅子ひとつとっても、“ゆとりを持って最高の一杯を楽しんでもらう”そういう環境をメーカーから提案している――といった位置づけなんです。
そうした背景から店舗を出すにしても、人が多い場所であればいいというわけではなく、illyの良さを理解してくれるような人が集まる、“illyがあって、心地いい場所”という形になっている面がありますね。現在、日本では14店、世界でも230店しかないんですよ」(大嶌さん)
店舗展開のポイントと呼応するように、本来であれば大量生産・大量販売されることの多い缶コーヒーも、現在は販売が限られているという。
「2008年に世界的なアライアンス展開として、コカ・コーラ社が缶コーヒー『イリー イッシモ』の製造・販売を行なう契約がされました。illyのコーヒーは業務用でも、家庭用でも、ドリップやエスプレッソなど抽出方法が違っても、全て同じブレンドです。もちろん缶コーヒーでも、世界で1つだけのillyブレンド。そのillyオリジナルの味わいを楽しんでいただくために、『イリー イッシモ』は香料や保存料は使用していません。
またパッケージデザインについても、イタリアブランドらしく、美味しさだけでなく、スタイリッシュさを伝えるように、こだわりを持っています。illyブランドの象徴でもある赤とシルバーを全体に使い、飲んでいる姿が格好良く見えるようにしました。まだ今は、限られた店舗でしか販売されていませんが、illyブランドを知っているような、コーヒー好きな方、感度の高い方に、しっかり支持されているようです」(渡辺さん)
「ジョージア」という缶コーヒーのトップブランドを有する日本コカ・コーラが、『イリー イッシモ』を販売することに、ビジネス上の問題はないのだろうか?
「イタリアのカフェと同じ味を缶で飲める『イリー イッシモ』を選ばれるお客様は、高い嗜好性などプレミアム感を求められます。実際に価格も一般的な缶コーヒーに比べて高単価ですし、“既存商品よりも上質”のニーズに応える商品で、競合することはないですね。
むしろこれまで缶コーヒーをあまり飲まれなかった方にも、『イリー イッシモ』で缶コーヒーを楽しんでもらいたいと思っていますし、illyブランドが提供する“上質な時間”を缶にすることで、気軽に体験してもらいたいと考えています」(渡辺さん)