さらに日本の経済関係者と会った中国要人は汪洋と胡春華で、いずれも習近平の太子党と対立する中国共産主義青年団(共青団)閥の有力メンバーだったことも重要だ。日本側は当初、習近平か李克強・首相との会談を希望していたが実現しなかった。
日中関係を重視している李克強が腹心の汪洋と胡春華に日本の訪中団と会うよう指示。しかし、それを快く思わない習近平らが会談直後にADIZ設定を発表した。「ADIZには党内闘争が微妙に絡んでいる」(同筋)との見立てだ。
一方、12月2日からのバイデン米副大統領の日中韓3か国歴訪に合わせたとの見方も説得力がある。
ADIZ設定からバイデン副大統領の中国訪問までの10日間で、日米韓3国や周辺諸国の反応はすべて出尽くし、国際的な認識が進むことになる。したがって、習近平にとって副大統領の反対は織り込み済みで、「(ADIZは)国際法および国際慣例に符合する措置だ」との立場を強調。結局、副大統領は記者会見などの場でADIZには触れず、これを事実上認めることになった。
※SAPIO2014年2月号