名捕手あるところに覇権あり――名将・野村克也がこう語るように、常勝チームには名捕手が存在する。1980年代から1990年代前半の西武黄金時代には伊東勤、同時期の広島には達川光男、ヤクルトの躍進には古田敦也、落合中日には谷繁元信、最近の巨人には阿部慎之介が……強いチームには心強い女房役がいた。
経験豊富な捕手が若手投手を引っ張り、成長させる。良い捕手は、チームを投手王国に変えていった。要するに、ベテラン捕手は替えの効かないポジションなのだ。
しかし、DeNAはレギュラー捕手である鶴岡一成(36)をフリーエージェント(FA)の人的補償のプロテクトから外し、鶴岡は阪神に移籍することになった。
現在のDeNAは、若手投手の成長なしに躍進は望めない状況だ。今季2年目を迎える三嶋一輝(25)や井納翔一(27)らが伸びない限り、悲願のクライマックスシリーズ進出は難しい。ベテランの鶴岡を失った今、その原石たちを経験の少ない若手捕手である高城俊人(20)や黒羽根利規(26)がリードしなければならない。
昨季、DeNAには3人の若手投手が先発ローテーションの一角を担った。3年目の須田幸太(27)、ルーキーの三嶋、井納の3人である。彼らの先発試合で、マスクを被った捕手別のデータを出すと、以下のようになる。
●須田幸太
捕手・鶴岡:11試合 5勝2敗 防御率4.50
捕手・黒羽根:1試合 0勝1敗 防御率19.29
●三嶋一輝
捕手・鶴岡:17試合 5勝8敗 防御率4.00
捕手・黒羽根:5試合 1勝1敗 防御率2.93
●井納翔一
捕手・鶴岡:8試合 5勝2敗 防御率3.70
捕手・高城:5試合 0勝5敗 防御率6.75
捕手・黒羽根 1試合 0勝0敗 防御率19.64