小泉純一郎元首相が都知事選で民主党などが推す細川護熙元首相を支援したことに呼応して、地方議員などが小泉派に寝返るなど、足下では安倍官邸の求心力の低下が指摘されている。そんな安倍政権にさらに外から圧力を加えようとしているのが、オバマ米大統領である。
「安倍さんは日米関係強化のために日本版NSC(国家安全保障会議)をつくったが、谷内正太郎・初代局長の初仕事が、対中国でも対北朝鮮でもなく、訪米して安倍さんの靖国参拝の後始末をすることだというのだから、こんなブラックジョークはない」(親米派の自民党ベテラン議員)
安倍政権寄りのメディアは、谷内氏がヘーゲル国防長官、ライス大統領補佐官、ケリー国務長官と会談したことを「異例の厚遇」(産経新聞)などと持ち上げたが、外務省OBの天木直人・元駐レバノン全権大使の見方はまるで逆だ。
「これはオバマからの最後通告でしょう。これまでの冷遇に比べ谷内氏がトップ級と会えたのは、オバマが『中国と韓国との関係を改善しろ』というメッセージを安倍氏にきっちり伝えようとしたためです。朝日新聞は『ライスが靖国問題を提起した』(1月19日付)とだけ書いていましたが、実際には『もう靖国には行くな、歴史認識も封印しろ』というニュアンスまで踏み込んだのではないか」
だが、オバマ大統領の信頼感を取り戻そうとする安倍氏の動きは、ことごとく裏目に出ている。その典型が沖縄基地問題である。
「安倍さんは挽回しようと靖国参拝の翌日、仲井真弘多・沖縄県知事に辺野古の埋め立て申請を認可させたが、これも名護市長選の敗北で行き詰まった。
国防総省も国務省も、沖縄がタイのような暴動に発展するんじゃないかと非常に心配している。名護市長選敗北に焦った安倍政権が『米国を喜ばせるため』に下手に埋め立て事業などを急がせた場合、反対派と警官隊との衝突が起きかねない。
国防総省は、それが一番困るわけで、こうなっては安倍さんが強引に埋め立て認可を出させたことも裏目に出た。日米関係では、安倍さんは完全に八方ふさがりになっている」(前出・自民党議員)