海外を含めた売上高ではダイハツを上回るものの、国内販売では僅差で2位。軽自動車をめぐる競争はますます激化している。スズキはどんな戦略を進めているのか。国内営業を担当する田村実・代表取締役副社長を直撃した。
──スズキの国内販売は業販店で売られる比率が8割と高い。社内ではどう位置づけているのか。
田村:スズキの原点は業販店との関係にある。私は1972年入社。その年の1月に第1回となる「副代理店大会」を開き、今年1月で43回目となった。今年は浜松や東京など6か所で延べ5000人が参加した。年間72台以上売った副代理店は鈴木修・会長兼社長から壇上で表彰される。出席すること、そして表彰を毎年目標としている副代理店は多い。業販店のおかげでスズキは成り立っている。
──副代理店大会ではみんな鈴木会長と会うのを楽しみにきている。一方で、80代の会長が先頭に立ち、以前のように客一人ひとりにビールを注いで回るのは厳しくなったのではないか。
田村:5年前から会長には着座してもらい、副代理店の方にテーブルに来てもらう形に変えた。われわれ役員が各テーブルを回り、ビールを注いで副代理店の方と記念撮影する。生産や技術の役員には担当の営業マンをつけ、紹介させて打ち解け易くさせている。会長の力には及ばないが、いまの体制でできる限りのことをやっていくしかない。「日頃は会えない役員に意見を言えた」と喜ぶ副代理店もいて、おおむね好評だ。
──一方で2割を占める直販ディーラーの販売力は、他社に比べて弱いのでは。
田村:ディーラーは業販店への卸営業が中心だった。だからエンドユーザーへの意識が薄かったのは確か。お客様が来店したのに立たせたまま対応したり、コーヒーや水すら出さなかったりするのが当たり前だった。それを改革すべく、3年前から全国150拠点の支店長、営業所長の教育をしている。今では他社に近いレベルのサービスができてきている。
ディーラー経由の販売を強化するために、都内をはじめとして大規模店舗を出店するなど投資も加速している。
──業販店とディーラーをどう両立させていくのか。
田村:業販店は地域に密着しているから敷居が低い。「入りやすさ」が特徴だ。その特徴を生かしながら接客教育を充実させたい。軽の保有率は地方が高く、これからも地域に根を張る業販店が大きな力を持っていくのは変わらない。