──新型車「ハスラー」の出足は好調だが、軽自動車のシェアはダイハツ工業が2007年から1位。3位のホンダもNシリーズで攻勢をかけている。
田村:競争が激化しているのは事実だ。軽の市場は拡大しているわけで、縮小する中で戦っているわけではないから競争しがいがある。ただし、どうしても1位をとろうとして無理な販売、とりわけ「自社届け出」をやると車のブランド価値は落ちていく。場合によっては軽市場全体にも影響を与える。
その一番の問題は人が育たなくなること。数字の帳尻を合わせることばかり考え、お客様から注文をもらうことに感動を覚えなくなるからだ。もちろん「軽ナンバーワン」になろうと努力はするが、無理はせず王道を進みたい。
──軽自動車税増税が決まった。逆風をどう乗り越えるか。
田村:地方の人は拙速な増税に怒っている。路線バスもない地域では軽は住民の足であり、インフラに等しい。
軽は「非関税障壁」ではない。海外メーカーも軽を自由に作って日本国内で売れるし、ダイムラーは「SMART」という実績もある。また、海外の自動車税制は日本の軽自動車と同レベルだ。「優遇税制」でもないと強調しておきたい。
「ガラパゴス技術」だという指摘があるが、インドでは少し大きなエンジンを積んだワゴンRなどがヒット車になっている。軽規格があるからこそ高い技術につながったのだ。今後は海外戦略としては世界共通のプラットフォームを作ることなどで競争力を高めていくことになるだろう。私が担当する国内販売では増税が決まったが、会長が会見などで述べている通りいい軽自動車を出して意地でも軽の比率を上げていきたい。
※SAPIO2014年3月号