偏差値30の金髪ギャルが、慶應大学合格を果たした軌跡を綴る『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話』(KADOKAWA)が話題だ。聖徳太子を「せいとくたこ」と読む女子校生さやかちゃんが「絶対無理」を跳ねのけ奮闘する姿、一貫して娘を信じ、見守る母親の愛など、胸を打つエピソードが感動を呼んでいる。著者のカリスマ講師・坪田信貴さんは、さやかちゃん以外にもこれまでに1200人もの子供を個別指導し、心理学を使った学習指導法で短期間で偏差値20~40アップを実現してきた。坪田さんに子供の伸ばし方について尋ねた。
――さやかちゃんの考えを尊重した母親の育て方が素晴らしいですね。先生から見て良かった点は?
坪田:受験勉強に限らず、自分が望むようにしたがる親が多いですが、さやかちゃんのお母さんは、子供がワクワクすることをやらせたいという信念を持っていました。自分がどうしてほしいではなくて、さやかちゃんがどう思っているかを考えていました。子供であっても他者の価値観を肯定して接することを実践していたところが素晴らしいと思います。
――学力を伸ばすために、家庭で親は子供にどう接したらいいのでしょうか?
坪田:“一喜一憂しない”ことです。親が不安になると子供も不安になります。「大丈夫?これで本当にいいの?」なんて言われたら、子供も不安になりますよね。極限の緊張状態の中で自分の実力を発揮するためには、悲しかったり喜んだりした時でも、落ち着いていなければならないですよね。そのためには、常日頃から子供自身がメンタルコントロールができていないといけないわけです。
――幼少期から褒められて育ち、自己肯定感のある明るく素直に育ったさやかちゃんの例から考えると、子供は叱らないほうがいいのでしょうか?
坪田:断然叱らないほうがいいです。プラスになることがないです。人間にとって幸せな状態であるためには、自分を好きになること=自己肯定感が大事です。親は、子供にとって、いいところを見てくれる絶対的な存在になることが重要です。先生と生徒は叱責する側と叱責される側になってはいけませんから、ぼくもさやかちゃんと“ボケとツッコミ”形式で楽しみながら授業を進めていました。
――さやかちゃんの母親が絶対的に子供を信じ続けたことも大きいですね。教師や親が「無理だ」と決めつけて潜在能力の芽を摘んでしまっていることが問題なのですね。
坪田:親や教師も、不充分な部分に目を向けがちで、子供自身を否定してしまっているように思います。よく、さやかちゃんのことを「もともと地頭が良かった」「素質があった」と言われるのですが、そういう子が学校では学年ビリとして放置されていたのです。どんなお子さんにも素質はある。ただ埋没しているだけなのです。これまで1200人の生徒を見ていますが、地頭の差はほとんどないんです。ちょっとした気づきで偏差値30の子が60、70になることはザラですし、偏差値は絶対的なものではないんです。