ドワンゴが始めた「採用試験受験料制度」について厚労省から取りやめるよう「助言」が入り、波紋を広げている。受験料徴収以外に、受験者数を適正化する方法はないものか。作家で人材コンサルタントの常見陽平氏が考えた。
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「受験料制度」で話題になったドワンゴに対して、厚生労働省が「助言」を行ったことが話題になっています。ドワンゴ社のこの制度も、厚生労働省の対応も賛否を呼んでいます。このコラムでは、いったん、この是非はおいておき、もともと同社が問題提起した、1人が100社応募してしまうような、1社に何万人も応募が殺到するような、就職活動の肥大化が起こらないようになるか、受験料を取る以外の取り組みについて考えてみたいと思います。
事の経緯はこうです。ドワンゴは、2015年度採用から、エントリー時の受験料制度を導入し、1都3県から受験する学生に対して2,525円の受験料を取ることを発表していました。
同社のHPによると、厚生労働省からの要請によって、2014年1月中旬に制度の主旨などに対するヒアリングが行われ、2月中旬にその結果についての伝達を受けたとのことです。より具体的には、「職業安定法 第48条の2」に基づき、厚生労働省より来年以降の受験料徴収の自主的な中止を求める旨の「助言」を受けたこと、今回は「助言」として口頭のみで行われ、書面等の受領はなかったことが明らかになっています。
この件は読売新聞や日本経済新聞などの全国紙、および各種ネットニュースで報道され、ブログなどでも賛否の意見が飛び交いました。
同社のもともとの問題提起は、入社採用試験に際して1人の受験生が100社以上もエントリーしている状況が正常であるとは言い難く、受験生、企業の双方にも大きな負荷がかかっておりこうした状況を解消すべきだというものでした。
実際、この制度を導入したことにより、2014年2月26日現在の書類応募数は対前年同時期比で全体では−64%(エンジニア職 −48%、企画職 −71%)、1都3県は全体でマイナス72%、その他エリアは−51%(エンジニア職は1都3県で−55%、その他エリアで−39% 企画職は1都3県で−78%、その他エリアで−57%)となっています。エンジニア職の応募者減少率は少なく、企画職は大きいですね。地方応募者の減少率は、首都圏に比べ低いですね。応募者を最適化するという意味では、一定の成果を上げているようです。
では、この受験料を取るという以外に応募者数の膨張を防ぐ取り組みとしては、どのようなものが行われているのでしょうか?具体例を紹介しましょう。
1.エントリーシートの負荷を重くする
企画書を書かせるもの、論文を書かせるもの、全人生について書かせるものまで。リクルートキャリアの調べによると、エントリーシート作成にかかる時間は手書きのものだと1社につき平均2時間程度。しかし、これはあくまで平均です。企画書や論文を書くものだと、もっと時間がかかりますね。この負荷をかけることにより、応募数を最適化しようとするやり方です。
2.大学名で切る
よく言われる学歴フィルターですね。応募自体は受け付けて、ばっさり大学名で切るやり方などです。この大学からしかとらないと宣言する企業はなかなかないですが。
3.必要な能力を明示する
英語力(TOEICのスコア)、プログラミングのスキルなど、応募に必要なスキルを明示するやり方です。大学の成績の提出させるというやり方も近いといえば近いです。
4.インターンシップへの参加をマストにする
内定に至るには、その会社でのインターンシップをマストにするパターンです。拘束される時間がありますし、その間の取り組み姿勢もチェックされるので、負担は重たいです。