また一つ、面白い政治家本が出た。村上正邦・元自民党参議院議員会長が書いた『だから政治家は嫌われる』(小学館刊)だ。
村上といえば、2001年にKSD事件をめぐる受託収賄容疑で東京地検特捜部に逮捕され有罪となり収監、2010年に刑期満了で釈放となったが、いま再審請求中の身だ。永田町の世界では「完全に終わった人」である。それだけに本音で日本の政治家と政治の姿を赤裸々に語っている。
安倍晋三政権が進めるアベノミクスについて「本当は誰がやっても一緒だったんだよ」など、私とは意見が違う部分も多々あるが、なるほどと思わせる部分もある。
冒頭から「私はね、政治家というのは『嫌われる仕事』だと思っている」と書く。米軍基地問題を例に挙げて、騒音被害を受けている周辺住民がいる一方、米軍相手に商売している人もいる。米軍の抑止力の恩恵を受けている国民が遠巻きにいる。
だから、政治家はみんなが妥協できる落とし所を探して最後は信念に従って決断するのが役割、という。決断すれば「ふざけるな」と怒る人がいるから「政治家は人に嫌われる覚悟が必要」と説く。
それなのに、いまは覚悟に乏しい政治家が多くて、憲法改正や靖国問題、歴史認識、外交からも逃げている。これが村上のメッセージだ。
パラパラと読みながら「これは永田町の政治家だけの話ではないな」と思った。いわゆる有識者とかマスコミだって、対立の激しい重大問題からは、あれこれと解説しながら、実は「逃げている」場合が多いのではないか。
集団的自衛権問題や憲法改正がそうだ。これらは戦後まもなくから、かれこれ60年以上も議論されてきたが、いまだに結論はおろか、態度をはっきりさせない政治家や政党、有識者がいる。日本の平和と安全保障に直結しているのに、どうすべきなのか、答えを出せないでいるのだ。
民主党もそうだ。民主党内には前原誠司元代表や長島昭久元防衛副大臣のように「集団的自衛権の行使を容認すべきだ」と考える議員もいるが、反対論も強く、党としての方針が定まっていない。