なぜ、そうなのか。政党や政治家の優柔不断もあるが、根本的な理由は議論自体を避けているからではないか。
村上は特定秘密保護法について「私が現役だったら『こんな欠陥商品みたいな法案、参議院じゃ審議しねえ』って突っ返している」「ちゃんと国会で審議して、問題があれば修正して、国民に理解を求めなさいよ」と書いている。私は秘密の法制化自体には賛成だが、審議を尽くせという意見に同感だ。
集団的自衛権について、民主党は「閣議決定の前に国会で議論をせよ」という。そう訴えながら、行使を容認するのかしないのか、という肝心の中身には踏み込もうとしない。上辺の言葉とは裏腹に、そもそも賛否の方針が決まらないからだ。
折からクリミア半島情勢は緊張感が高まっている。ロシアは実効支配をあきらめず、米国は断じて認めないガチンコ対決の様相である。「日本は米ロ対決に深入りせず、様子見がいい」という意見もあるが、そんな傍観者的態度で世界の信頼を得られるか。
双方にいい顔をする日和見戦略は一歩間違えれば、双方から不信を買う結果になりかねない。ここはロシアの暴挙は認めない姿勢を明確にする。その上で、村上流に言えば「嫌われる仕事」を買って出るべきではないか。
(文中敬称略)
文■長谷川幸洋:東京新聞・中日新聞論説副主幹。1953年生まれ。ジョンズ・ホプキンス大学大学院卒。政府の規制改革会議委員。近著に『2020年新聞は生き残れるか』(講談社)。
※週刊ポスト2014年4月4・11日号