六大学野球という最高峰の舞台に立ち、甲子園を経験したエリート選手らと対峙し続けてきた東京大学野球部。2010年秋季シーズン以降、勝ち星に恵まれず、4月20日にはリーグ史上ワースト記録となる「70連敗」に並んだ。
4月12日、東京六大学野球の春季リーグの開幕戦となった明大vs東大。5回まで明大から1点も奪えないが、与えた点も1点のみという投手戦が続く。今秋のドラフト1位候補のエース山崎福也を擁する明大を相手に善戦である。このまま終盤まで1点差が続き、ワンチャンスをものにすれば、勝てるかもしれない。そう思った東大ファンもいただろう。だが、いつものように期待は裏切られた。
6回表の明大の攻撃で、走者が三塁に止まっているのに右翼手が本塁に悪送球し、1点を献上。気持ちの糸が切れたのか、8回に4点、9回に1点を奪われ、結局0対7の完封負けを喫した。続く翌日の第2戦も0対10と大敗である。
後日、小誌記者が東大野球部を訪ねると、第2戦に先発した山本俊選手(2年)が肩を落としていた。
「僕のストレートは140キロ台でチームの中では一番速い。でも、その程度のスピードでは、明治の打者にはまったく通用しないんです。もっと、球種のバリエーションをもたないと」
野手陣も試合後、2戦連続の“ゼロ行進”に反省ばかりを口にしていたという。 彼らの肩に重くのしかかるのは単なる敗戦のショックではない。この時点で、東大は明大戦の2連敗でリーグ戦68連敗となっていた。
そして翌週、4月19、20日の慶大戦で2連敗し、自らが1987年秋季から1990年秋季にかけて作った「70連敗」というリーグワースト記録に並んだ。なぜ、東大はこんなにも勝利から見放されているのだろうか。
昨秋の東大投手陣の防御率は4.03。リーグワーストとはいえ、そう大崩れしているわけではない。だが、攻撃力は圧倒的に不足している。昨秋は10試合中得点したのは2試合のみで、それぞれ2点ずつ。1試合平均0.4点だ。しかも慶大にはノーヒットノーランを喫し、昨春は早大に完全試合を喫している。
攻撃力が貧弱な東大は「各駅停車」と皮肉られている。「長打力がないうえに足が遅いのでヒット1本で1つの塁しか進めず、1点取るのに4本の単打が必要」(アマチュア野球担当記者)という意味だ。それでは点を取るのは難しい。
点を奪えないことで守備に重圧がかかり、終盤にミスを連発する。それが一つの負けパターンだ。