「私は被災者が立ち直れるように全力で激励したい。絶対に諦めず、希望を捨ててはなりません」
チベット仏教の最高指導者、ダライ・ラマ14世は4月、仙台市内で「大切なものを失った時、英知と自信を育む方法」と題して講演し、2011年3月の東日本大震災の被災者ら1500人を前に、声を振り絞るように訴えた。
これに先立ち、ダライ・ラマは出羽三山神社(山形県鶴岡市)や竹駒神社(宮城県岩沼市)の神職らとともに神事に参列。神前で手を合わせ、玉串を捧げるなど、宗教の枠を越えて大震災犠牲者の冥福を祈り、被災地の再生を願った。ダライ・ラマが被災地を訪れるのは2011年11月以来、2度目のことだった。
ダライ・ラマはキリスト教など他宗教の指導者と同じイベントに参加することはあるが、まったく教義が違う宗教の教義に則って祈りを捧げるのは極めて異例。「それだけ、震災被災者の平穏な日々が戻ることを切に願っている」と関係者は語る。以下はダライ・ラマの講演録だ。
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この会場にいらっしゃる方のなかにも、大震災で大きな困難に直面し、筆舌に尽くしがたい苦しみを体験した方がいるでしょう。しかし、苦しみに直面して不幸な気持ちを持ったままでは、さらに苦しみが増してしまう。困難を克服する唯一の方法は、勇気と自信を持って、楽観的な気持ちとゆとりある心で希望を見出し、現実に向き合うことなのです。
私は2011年11月、宮城県石巻市を訪れて被災者と会いました。「不幸な気持ちを持ったままでは、さらに苦しみを抱えてしまうことになる。自信を持って、あらゆる現実に対峙し、楽観的な気持ちで現実に対処すれば、絶対に道は開けていく」と話しました。
私自身、16歳で自分の国を失い、24歳で亡命して、その後の54年間、難民として生きてきました。そのなかでは何度も困難な時代がありました。それでも私は絶対に諦めませんでした。希望を持って目標に向かって頑張り続ける姿勢を貫くことができたのです。
私はチベットの再興を目指して、決して諦めずに、毎日の祈りを通して勇気をもらい、チベット人の難民を激励してきました。彼らはインドに亡命した当初、涼しいチベットでは決して経験することのない酷暑の密林で開墾作業などを強いられ、「こんな劣悪な環境では死んでしまう」と弱音を吐きました。