ライフ

【著者に訊け】十市社 青春ミステリー『ゴースト≠ノイズ』

【著者に訊け】十市社氏/『ゴースト≠ノイズ(リダクション)』/東京創元社/1700円+税

 小説、ことにミステリーでは、いざという時に身体性を欠く〈幽霊〉の活躍が時に悲哀や滑稽味すら醸し出し、傑作も多い。

 が、〈その日まで、ぼくは教室の“幽霊”だった〉とカッコつきで言われると、背筋よりは胃に冷たいものが落ちる。荒廃した教室、いじめ、シカト……要するに彼は生きながらに存在を否定された幽霊なのだろうと、誰もが事情を呑み込めてしまう時代に、十市社著『ゴースト≠ノイズ(リダクション)』は刊行された。

 ある女子から声をかけられ、家族以外と5か月ぶりに会話をしたその日、〈一居士架(いちこじかける)〉の世界は一変した。彼女〈玖波高町(くぼたかまち)〉と図書室や屋上で2人の時間を過ごすことで、彼は1年A組のいないはずの人目という立場を少し抜け出したのだ。

 と書くとよくある学園物に思えるが、そもそも架はなぜ“幽霊”だったのか? 高町の目的とは? 何もかもが、謎だらけだ。

 元々は氏が個人出版した電子書籍を、東京創元社が書籍化。全く新しいタイプの青春ミステリーとして、これが処女作となる著者の筆力共々話題を呼んでいる。

「この筆名はちょうどペンネームを考えていた頃に手塚治虫さんの『火の鳥』を読んでいて、確か十市皇女(とおちのひめみこ)のキャラクターが気に入って付けたんだと思う。下の名前も性別や特定のイメージを想起されないような名前を考えました。作中の人物についても、特に主人公たちは境遇が境遇なので、実在の人物と被らない名前にしたかったんです。

 僕は自分でも地名や人名に馴染みのない海外の作品の方が物語に没頭でき、特に好きなのがイギリスの作家ロバート・ゴダード。この面白さが日本語でわかるなら自分にも書けるんじゃないかと思ったのが、小説を書き始めたきっかけです」

 タイトルは「音響機器の雑音除去装置から」発想し、「≠や( )は無視して片仮名だけ読んで下さい」と飄々と言う。では幽霊は?

「以前、ある一家が犠牲になった火事のことを、娘さんの学校で報告する場面を地元紙で読んだことがあるんです。その時、小説としてそのシーンを描くとすれば、被害者とは別の人物に視点を置く必要があると考えたのと同時に、ある物体を数回ひねったような図形が頭に浮かびました。それで、見方によって真相が二転三転していく話を、実際の火事とは関係なく書いてみようと思いました」

関連記事

トピックス

天皇陛下にとって百合子さまは大叔母にあたる(2024年11月、東京・港区。撮影/JMPA)
三笠宮妃百合子さまのご逝去に心を痛められ…天皇皇后両陛下と愛子さまが三笠宮邸を弔問
女性セブン
歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
胴回りにコルセットを巻いて病院に到着した豊川悦司(2024年11月中旬)
《鎮痛剤も効かないほど…》豊川悦司、腰痛悪化で極秘手術 現在は家族のもとでリハビリ生活「愛娘との時間を充実させたい」父親としての思いも
女性セブン
ストリップ界において老舗
【天満ストリップ摘発】「踊り子のことを大事にしてくれた」劇場で踊っていたストリッパーが語る評判 常連客は「大阪万博前のイジメじゃないか」
NEWSポストセブン
紅白初出場のNumber_i
Number_iが紅白出場「去年は見る側だったので」記者会見で見せた笑顔 “経験者”として現場を盛り上げる
女性セブン
弔問を終え、三笠宮邸をあとにされる美智子さま(2024年11月)
《上皇さまと約束の地へ》美智子さま、寝たきり危機から奇跡の再起 胸中にあるのは38年前に成し遂げられなかった「韓国訪問」へのお気持ちか
女性セブン
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
結婚を発表した高畑充希 と岡田将生
岡田将生&高畑充希の“猛烈スピード婚”の裏側 松坂桃李&戸田恵梨香を見て結婚願望が強くなった岡田「相手は仕事を理解してくれる同業者がいい」
女性セブン
電撃退団が大きな話題を呼んだ畠山氏。再びSNSで大きな話題に(時事通信社)
《大量の本人グッズをメルカリ出品疑惑》ヤクルト電撃退団の畠山和洋氏に「真相」を直撃「出てますよね、僕じゃないです」なかには中村悠平や内川聖一のサイン入りバットも…
NEWSポストセブン
注目集まる愛子さま着用のブローチ(時事通信フォト)
《愛子さま着用のブローチが完売》ミキモトのジュエリーに宿る「上皇后さまから受け継いだ伝統」
週刊ポスト
イギリス人女性はめげずにキャンペーンを続けている(SNSより)
《100人以上の大学生と寝た》「タダで行為できます」過激投稿のイギリス人女性(25)、今度はフィジーに入国するも強制送還へ 同国・副首相が声明を出す事態に発展
NEWSポストセブン