日本経済再生のため、「移民受け入れ」を決断するならば国家の基盤を左右しかねない大きな政策変更になるだけに、実行には具体的かつ戦略的なビジョンが必要になる。20年以上前から「移民は不可欠になる」と提言してきた大前研一氏が指摘する。
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デモグラフィー(人口統計学)は冷徹だ。国立社会保障・人口問題研究所の推計による2050年の日本の人口ピラミッドは、男女とも70代後半が最も多く、低年齢になればなるほど少ない”モスラの幼虫形”になっている。
このままだと生産年齢人口は大きく減少し、現在の国力が維持できなくなるのは火を見るより明らかだ。それを反転する方法は移民の受け入れだと、私は20年以上前に提言した。
そもそもデモグラフィーや人口ピラミッドが何のためにあるのかと言えば、国家の長期的な政策を作るためである。言い換えれば、人口に関することは教育などと並ぶ国の「基本政策」であり、それを変えるには少なくとも20年かかる。
実際、私が40年以上にわたって経営コンサルタントとして活動してきた経験からすると、たとえば日本企業が外国人社員を増やして真にグローバル化しようと思ったら、公平な人事制度や給与体系を整備するだけでも5年単位で試行錯誤しながら様々な問題や軋轢を解決していく必要があり、最終的には20年かかる。それを踏まえれば、国家が(試行錯誤が必要な)人口問題を解決しようとする際にも20年以上かかるのは当然だろう。
逆に言うと、20年かけずにその場しのぎで移民政策を進めたら必ず失敗する。たとえば25~30年前のバブル期、人手不足になった土木建設業や製造業で働くため、南米の日系人をはじめパキスタン、イランなどから労働者が続々とやってきた。日本政府は単純労働者の受け入れを認めていないため、彼らは観光ビザ、学生ビザなどで来日して不法就労の形で働き、それを政府も事実上、黙認していた。