しかし、バブル崩壊後に景気が悪化したら、日本企業は外国人労働者を容赦なく解雇して追い返した。なかには不法滞在して働き続ける外国人も少なくなかった。そうした付け焼き刃のやり方をしたせいで、日本は世界で評判を落としてしまった。
あるいは、いまシンガポールやUAE(アラブ首長国連邦)のアブダビはハイテクタウンを建設し、破格の待遇で世界中から優秀な研究者を集めている。だが、彼らはおおむね3年間で結果を出せなかったら帰国させられてしまう。
そういう短期間で成果を求める不自然な仕掛けや政策が成功する可能性は非常に低いと私は思う。アメリカ大陸に可能性を求めて渡っていった人々のように、永住を前提としてこそ「命がけで」その国の中で活躍し、その国に貢献しようとするのである。
安倍晋三首相は人手が不足している建設や高齢者の介護、農業、家事サービスなどの分野で外国人労働者の受け入れを拡大する方針を示す一方で、「移民政策と誤解されないよう配慮しつつ、検討を進めてほしい」と指示した。つまり、移民ではなく期間限定の労働力を入れようとしているわけだ。しかし、それでは25~30年前と同じ失敗を繰り返すだけである。
※SAPIO2014年6月号