昨今は「妊活」が話題となり、女性の妊娠・出産や育児、また仕事との両立について、これまで以上にオープンに語られるようになった。そして昨年から認知が拡大している「マタハラ(マタニティハラスメント)」――働く女性が妊娠・出産を理由に受けるハラスメントも、社会問題のひとつとして注目されている。こうした認識やキーワードが広まる一方で気になるのは、「企業のマタハラ対策は、進んでいるのか?」という点だ。
6月10・11日10:00~19:00「女性のための全国一斉労働相談」(0120-154-052)を実施する日本労働組合総連合会(連合)で、女性の労働問題に詳しい村上陽子さんに、マタハラ対策の現状や課題について話を聞いた。
「マタハラという言葉や意味について、この1年ほどで多くの人に知られるようになりました。企業の対応という点では、人事や社労士といった労務管理に関わる人の勉強会が増え、そうしたポジションの方の認知や対策への理解は深まってきています」
とはいえ、まだ多くの職場でマタハラが起きているのも現実だ。村上さんが人事向けの講演等に登壇した際、質疑応答で多いのは、会社として産休・育休制度などを整備して環境を整えても、現場の管理職が退職や雇用条件の不利益変更を求めるケースで、「どうやったら、意識改革させることができるのか?」といった相談だという。そうした状況に対し、村上さんはこう語る。
「管理職には、セクハラやパワハラを含めてハラスメントに関する研修を実施するなど、マネージャーに必須の知識として、マタハラ問題をきちんと理解してもらう必要があると思います。また、妊娠に伴う体調の変化は個人差が大きく、『以前産休・育休を取った○○さんは、こうだった』や『うちの妻は、こうだ』というのは、参考にならない面も。
こうした点は管理職だけでなく、一般社員など周りも注意しないといけない領域です。出産経験者が自分の経験を例に、気遣ったり、ケアをしたりするのは良いのですが、逆に『自分はこれくらいまで、がんばった』など、無理を強いるような発言はマタハラになります。逆に気遣いすぎが問題になるケースでは、男性ばかりの職場や経産婦がいない職場で『どのようにケアすればいいかわからないから、何もさせない』となる極端なパターン。
“個人差がある”ことを前提に、周りは『どうするのがいいか?』と聞く姿勢を持つ、本人も『どうして欲しいのか?』をきちんと伝えるようにする――日常的な職場の人間関係の中で、“一人ひとりを尊重する”配慮が大切です」