もちろん、罪を償った元犯罪者が社会復帰するのは良いことだし、すでに服役した元犯罪者に対する人権上の配慮もあってよい。しかし、それならどの犯罪者に対しても同じように温かい目で報じるのでなければ公平・中立の報道機関とは言えない。覚醒剤所持で逮捕され、懲戒免職となった福岡県の小学校校長が再び教職に就くとしても、大新聞やテレビは「良かった」「美談だ」と歓迎するだろうか。
この事件では、子供たちを薬物汚染から守る観点から責任ある教育者の犯罪は許し難いという論調で各メディアが足並みを揃えていたが、それを言うなら芸能人こそ厳しく断罪し、どれだけ悪い事をしたかを徹底的に世間に伝えるべきだろう。どんな時代でも(古き良き時代は違ったのかもしれないが)、校長先生と人気タレントのどちらに子供たちが親しみと尊敬を抱くか、ここではっきり書くのも野暮というものである。
罪を償った者に対する報道という点でも、一般人ならともかく、社会的影響の大きい著名人の事件であれば、服役後も実名報道が原則だろう。政治家の汚職事件などで、「当時の建設大臣が収賄で逮捕された」などと書くケースもたまに目にするが、実名で書くケースとどう違うのかは不明確で、ここでも特定の者に対する〝配慮〟の匂いが感じられる。
芸能界の薬物汚染が一向になくならないのは、“身内”の大メディアが彼らを甘やかし、本気で追及しようとしないからだ。
※SAPIO2014年7月号