6月12日に改正薬事法が施行された。薬局で処方箋なしで買える大衆薬の99.8%がネットで販売できるようになった代わりに、それまで薬局で誰でも買えた0.2%の薬(現在は20品目)が「要指導医薬品」という新たな分類に指定され、ネット販売できないだけでなく、薬局の店頭でも「本人への対面販売」が義務付けられた。痛みに苦しむ家族の代わりにドラッグストアに行っても、解熱鎮痛剤の「ナロンメディカル」など一部の薬は本人ではないと買えなくなったのである。
なぜ、こんなおかしな規制ができたのか。
大衆薬のネット販売解禁は安倍晋三政権が「規制緩和の象徴」と威張るようなものではない。薬のネット販売を禁止した厚労省省令が違法かどうか争われた裁判で、昨年1月、最高裁が「省令は違法」という判決を出したことから、政府はネット販売の自由化をせざるを得なくなっただけだ。政府も与党もずっと薬剤師団体と一体となって、国民の求める規制緩和から逃げ回ってきた。
しかし、最高裁で判決が出たことで政府も逃げられなくなった。安倍政権の産業競争力会議は昨年6月、大衆薬のネット販売を全面解禁する方針を打ち出した。
ところが、自民党厚労族や厚生労働省、薬剤師会という政官財のトライアングルが猛烈な巻き返しに出た。厚労省は医療用から転用されて間もない市販薬と毒性の強い劇薬指定薬をネット販売の対象から除外すべきだと主張し、改正薬事法に「要指導医薬品」に対する規制強化が盛り込まれた。この20品目が厚労省や薬局の権益を温存するための仕掛けとなったのである。狙いは業界にとってドル箱である「処方箋薬」の市場を守ることだ。