医薬品には処方箋薬(医療用医薬品)と大衆薬の2種類がある。その市場規模は大衆薬が年間約6000億円なのに対し、処方箋薬は年間約10兆円(2013年度)とケタ違いに大きい。しかも、処方箋薬の市場は医療費の増加とともに3年間で1兆円も伸びている。
薬局の数も5万5797か所(2013年3月)で年間1000か所のペースで増えており、コンビニの数より多い。経済ジャーナリストで熊本学園大学招聘教授の磯山友幸氏が語る。
「業界は利幅が大きい処方箋薬の市場をネット販売に奪われるのは絶対に阻止したい。現在、大衆薬の全品目のうち99.8%までネット販売が認められているが、これが大衆薬全面解禁になれば、『次は処方箋薬にもネット販売を認めるべき』という声が強まることは確実です。諸外国では普通に認められていることですから。
それを防ぐための防波堤として、わざわざ大衆薬の20品目だけに対面販売義務を課してネット販売の対象から外し、『まして処方箋薬の解禁などとんでもない』という世論を作ろうとしたわけです」
巧妙なのは、「本人への販売」を義務づけたことだ。
薬剤師会はネット販売に反対する際に「対面でなければ購入者の顔色などから症状を読み取り、適切な注意を与えることができない」と主張してきた。その主張に対しては「家族が薬を買いに来たら、顔色なんてわからないじゃないか」というもっともな批判がなされてきた。そこで今回の20品目は単に「対面販売義務」とせず、「本人への販売」まで義務づけ、ネット販売拡大に対する防波堤としての役割を強化したのだ。
※週刊ポスト2014年6月27日号