国内

安倍政権の法人税減税「意味ないどころか逆効果も」と大前氏

「税は国家なり」という言葉がある。税制を議論することは、国の未来の姿を考えることにほかならない。しかし、この国の為政者たちは日本の未来を何も考えていないようだ。大前研一氏は、新成長戦略で本格的に打ち出されるとみられる「法人税減税」は全く成長につながらないと指摘する。

 * * *
 安倍政権は6月に成長戦略を改定する。その”目玉”として注目を集めたのが「法人税減税」だ。
 
 日本の法人税の実効税率は国税と地方税を合わせて35.64%(東京都の場合)。政府の経済財政諮問会議は5月15日、伊藤元重・東京大学大学院教授ら民間議員4人が「将来的には25%を目指しつつ、当面、数年以内に20%台への引き下げを目指すべきだ」と提言し、それを受けて安倍首相は6月に取りまとめる経済財政運営の基本指針「骨太の方針」で法人税減税を具体化するよう指示した。
 
 政府は、法人税を安くすれば海外企業が日本に集まり、経済が活性化すると主張しており、新聞もそうした論調で報じている。
 
 しかし、「法人税減税」は意味がないどころか、逆効果になる可能性さえある。
 
 そもそも法人税率が高くても成長している国はあるし、低いのに成長していない国もある。今や法人税率は、企業がどこに拠点を置くかという意思決定には、あまり関係していないのである。
 
 なぜなら、すでに海外の企業はグローバルな節税の仕掛けを持っているからだ。
 
 たとえば、法人実効税率が40.75%と日本より高いアメリカのアップル、グーグル、アマゾン、フェイスブックといったIT企業は「ダブル・アイリッシュ、ダッチ・サンドウィッチ」などと呼ばれる合法的な節税スキームを使っている。
 
 詳細は省略するが、法人税率が12.5%と低いアイルランドに2つの法人(子会社)を設立(ダブル・アイリッシュ)し、さらにオランダ法人を間に挟んで(ダッチ・サンドウィッチ)特許や商標権などの無形資産についてライセンス契約とそれに対する支払いをやりとりする方法で、これにより実効税率は数%から10%前後になる。
 
 新興のIT企業ではスタンダードな方法で、前述の企業以外にも多くの会社がこのスキームを採用している。

関連記事

トピックス

「性的欲求を抑えられなかった」などと供述している団体職員・林信彦容疑者(53)
《保育園で女児に性的暴行疑い》〈(園児から)電話番号付きのチョコレートをもらった〉林信彦容疑者(53)が過去にしていた”ある発言”
NEWSポストセブン
テレ朝本社(共同通信社)
《テレビ朝日本社から転落》規制線とブルーシートで覆われた現場…テレ朝社員は「屋上には天気予報コーナーのスタッフらがいた時間帯だった」
NEWSポストセブン
62歳の誕生日を迎えられた皇后雅子さま(2025年12月3日、写真/宮内庁提供)
《愛子さまのラオスご訪問に「感謝いたします」》皇后雅子さま、62歳に ”お気に入りカラー”ライトブルーのセットアップで天皇陛下とリンクコーデ
NEWSポストセブン
竹内結子さんと中村獅童
《竹内結子さんとの愛息が20歳に…》再婚の中村獅童が家族揃ってテレビに出演、明かしていた揺れる胸中 “子どもたちにゆくゆくは説明したい”との思い
NEWSポストセブン
今回の地震で道路の陥没に巻き込まれた軽自動車(青森県東北町。写真/共同通信社)
【青森県東方沖でM7.5の地震】運用開始以来初の“後発地震注意情報”発表「1週間以内にM7を超える地震の発生確率」が平常時0.1%から1%に 冬の大地震に備えるためにすべきこと 
女性セブン
日本初の女性総理である高市早苗首相(AFP=時事)
《初出馬では“ミニスカ禁止”》高市早苗首相、「女を武器にしている」「体を売っても選挙に出たいか」批判を受けてもこだわった“自分流の華やかファッション”
NEWSポストセブン
「一般企業のスカウトマン」もトライアウトを受ける選手たちに熱視線
《ソニー生命、プルデンシャル生命も》プロ野球トライアウト会場に駆けつけた「一般企業のスカウトマン」 “戦力外選手”に声をかける理由
週刊ポスト
前橋市議会で退職が認められ、報道陣の取材に応じる小川晶市長(時事通信フォト)
《前橋・ラブホ通い詰め問題》「これは小川晶前市長の遺言」市幹部男性X氏が停職6か月で依願退職へ、市長選へ向け自民に危機感「いまも想像以上に小川さん支持が強い」
NEWSポストセブン
割れた窓ガラス
「『ドン!』といきなり大きく速い揺れ」「3.11より怖かった」青森震度6強でドンキは休業・ツリー散乱・バリバリに割れたガラス…取材班が見た「現地のリアル」【青森県東方沖地震】
NEWSポストセブン
3年前に離婚していた穴井夕子とプロゴルァーの横田真一選手(Instagram/時事通信フォト)
《ゴルフ・横田真一プロと2年前に離婚》穴井夕子が明かしていた「夫婦ゲンカ中の夫への不満」と“家庭内別居”
NEWSポストセブン
二刀流かDHか、先発かリリーフか?
【大谷翔平のWBCでの“起用法”どれが正解か?】安全策なら「日本ラウンド出場せず、決勝ラウンドのみDHで出場」、WBCが「オープン戦での調整登板の代わり」になる可能性も
週刊ポスト
世代交代へ(元横綱・大乃国)
《熾烈な相撲協会理事選》元横綱・大乃国の芝田山親方が勇退で八角理事長“一強体制”へ 2年先を見据えた次期理事長をめぐる争いも激化へ
週刊ポスト