ただし、会社の立ち上げからこの仕組みを前提に経営体制を構築してきた新興IT企業と違って、老舗であるGE(ゼネラル・エレクトリック) など大手のメーカーや化学会社がその真似をするのは難しい。実態が変わっていないのに、急に「ダブル・アイリッシュ、ダッチ・サンドウィッチ」の仕組みだけ使おうとすると、税逃れではないかと税務当局に目を付けられるからだ。
では、彼らはおとなしく40%の税金を払っているかといえば、そうではない。それぞれが事業形態に合わせて「世界最適課税プログラム」を構築して実効税率を下げているのだ。
これは各国の税制と通貨の条件などを連動させ、部品や資材がどういう形で国境をまたいで移動するかといった情報を入力すると、世界トータルの法人税支払いが最小になるシステムを自動的にはじき出すプログラムである。
グローバル企業ではそうした税負担を軽くする仕掛けがすでに確立している以上、たとえ日本が法人税率を25%に下げても、外国企業がわざわざ日本にやって来るインセンティブにはならないだろう。25%はヨーロッパの平均でしかないし、アジアでは香港が16.5%、シンガポールと台湾は17%である。つまり、アイルランド並みの12.5%くらいに下げなければ、世界から企業を呼び込むことはできないのだ。
安倍政権が香港やシンガポールと勝負できるレベルの法人税減税を検討しているなら理解できなくもないが、いま議論されている「20%台後半」では全く話にならない。
※SAPIO2014年7月号