<「透明国際」が公開した『2004年世界反腐敗年度報告』によると、日本は最も清廉な30か国のひとつに選ばれた。日本は世界で収入分配の最も公平な国であり、ジニ係数は0.285である>(編集部注=2000年の水準)
ジニ係数とは社会における所得配分の不平等さを示す指標である。数値が低いほど平等とされ、高ければ不平等となる。
『習近平の正体』(小学館)などの著書があり、中国の政治経済に詳しいジャーナリストの相馬勝氏がいう。
「中国が今年発表した2013年のジニ係数は0.473で、社会騒乱が多発しかねない基準とされる0.4を大きく超えている。
この論文は我々が読むと日本を褒め称える点が特に目につくが、実は中国共産党政治の腐敗ぶりを批判することが真の目的ではないか。単純にジニ係数の問題を持ち出せば政府から圧力をかけられる可能性があるため、多角的な要素から日中を比較する体をとったのだと思われます。
2012年の就任当初から習近平は腐敗撲滅キャンペーンを進めてきたが、共産党内には抵抗する勢力も依然多い。そうした反対派にプレッシャーをかける狙いがある可能性もある。少なくとも確かなことは、この論文は、人民の不満が爆発直前にあることを背景に書かれたということです」
なるほど、王氏は論文の最後をこんな一文で締めくくっている。
<中国の経済が発展するにつれ、海外では中国の勢いが大袈裟に伝えられた。それで私たちは大喜びしていたのだ。(中略)一方で輝かしいデータの数々は、日本が没落していないことを示している。
ここで挙げたような日本が私たちより優位であるデータを見て、私たちは劣等感を持つ必要はないが、ただし私は常に「革命いまだ成らず、同志よ、努力を続けよう」と自分たちに言い聞かせたいと思う>
中国人も中国の矛盾と危うさに気付き始めている。そうしたインテリ層と連携するくらいのしたたかな戦略を持つ政治家が、“優れた日本”にいないものか。
※週刊ポスト2014年7月11日号