9月11日に朝日新聞の木村伊量社長による、東日本大震災時の福島第一原子力発電所での事故当時の様子を吉田昌郎元所長(故人)に聞き取り調査した報告書「吉田調書」報道(5月20日)の取り消しと謝罪を主とした記者会見がおこなわれた。
同報道では、福島第一原発の作業員が職場放棄して逃げたと記述。世界にもこの記事は拡散し、韓国ではセウォル号沈没事故と重ねあわせる報道さえ出たほどである。この謝罪会見が国内外に広げた波紋は、朝日の「従軍慰安婦」誤報と相似形をなしている。
「済州島で200人の若い朝鮮人女性を『狩り出した』」とする吉田清治氏(故人)の虚偽証言を朝日が初めて紹介したのは1982年9月2日(大阪版朝刊)だった。吉田氏は翌1983年、『私の戦争犯罪 朝鮮人強制連行』(三一書房刊)と題した著書を出版し、これも「慰安婦=強制連行された性奴隷」説が広く知られるきっかけとなった(韓国では1989年に翻訳出版)。
朝日は1990年代にかけ、吉田証言について「確認できただけで16回」掲載したとする。しかし、「強制連行」「性奴隷」を印象づける朝日の「慰安婦」報道はそれ以上に膨大だ。朝日のキャンペーンに呼応して韓国でも吉田証言を基にした「従軍慰安婦問題」が脚光を浴び、日韓における政治問題と化したのは周知の通りだ。
そうして火がついた「従軍慰安婦問題」がその後、世界中に広まった。
1993年6月、オーストリア・ウィーンで開催された「世界人権会議」では、部会として「日本軍性奴隷に関するアジア女性フォーラム」が開かれた。全体会議で採択された『ウィーン宣言および行動計画』には女性に対する暴力や差別を撤廃する条項の中に「性的奴隷」という言葉が盛り込まれている。
1996年、国連人権委員会に「女性への暴力に関する特別報告書」が提出された際は、付属文書(いわゆる「クマラスワミ報告」)で慰安婦を性奴隷として明記した。その根拠として、吉田証言がそのまま採用されている。