日本の評判を貶めかねない朝日の報道キャンペーンはほかにもある。もっとも有名なのは本多勝一記者が1970年代初頭に中国を取材した『中国の旅』の連載だろう(後に単行本化)。記事では「南京事件」や「731部隊による人体実験」などを事細かに描写し、中国における旧日本軍の“残虐行為”を追及している。特に南京事件に関しては、虐殺の存否や規模などを巡る論争のきっかけを作った。
1982年には朝日の「教科書検定誤報」に絡んで南京事件の記述が日中間で政治問題化。その後双方による調査研究が進んだが、例えば虐殺数を巡っては数千から30万人以上とするものまでかなりの開きがある。にもかかわらず1990年代になると特に米国では中国系移民を中心に「日本叩き」が行なわれ、アイリス・チャンの『ザ・レイプ・オブ・南京』が出版されると、各国語に翻訳され論争は世界へと広がった。
中国では〈肯定派の本多氏は南京大虐殺が日本で広まる上で特別な役割を果たした〉(南方週末 2009年4月30日)と評価されている。
※SAPIO2014年11月号