ネットも携帯も一切禁止の正真正銘のガチ旅を、一切のズルもなく続けてきた太川氏は説く。〈ボクはウソっていうのは一番ダメなことだと思うんです。社会でも、友人関係でもウソをつくと、そこから必ずなにかほころびが出てくる〉と。そんな正論を正面切って書く彼の、どんな仕事にも全力で取り組む生真面目な姿勢が本書でも印象的だ。
「僕は10代の頃からずっと崖っぷちを歩いてきた気分なんです。この芸能界の厳しさを知るからこそ、芝居でもワンミスが命取りだと思ってやってきたし、いただいた仕事は全力でやるクセが身に着いたんだと思う。
でも努力は見せない方がカッコいいんだって、やっと30過ぎて思えるようになった。もちろん芝居も旅番組も精一杯やるんですが、それこそ人事を尽くしていると必ず神様が降りてくる! どうして? と疑うような偶然がバス旅でも起きるんです。そんな時です、適当に流して生きるんじゃなくて全力で挑んでよかった、と感じるのは……」
特に仕切るつもりもないまま場を仕切り、目の前の仕事を懸命にこなすうち、いつしか名リーダーの評価を得た太川氏。だが、4日間、ずっと一緒の旅を想像してほしいと氏はつぶやく。
「とにかく4日間ず~っと一緒ですからね。早朝から深夜まで……。そんな旅、ふつう、夫婦や親子でもないでしょ。だから人間の本性がそのまんま出ちゃう。魔の3日目はその生々しさも含めて魔の3日目(笑い)」
〈仲がいい〉と〈馴れ馴れしい〉は違うと彼は言い、互いを理解しながらも無闇に馴れ合わない絶妙の距離感こそが、彼らの旅を面白くする秘訣なのだろう。
【著者プロフィール】太川陽介(たがわ・ようすけ):1959年京都府生まれ。府立峰山高校2年の時、桜田淳子主演映画の相手役に応募し、1976年『陽だまりの中で』で歌手デビュー。翌年『レッツゴーヤング』レギュラーとなり、『Lui-Lui』が大ヒット。1979年から司会を務め、『ぼくの姉さん』『熱中時代』等俳優としても活動。1989年には宮本亜門演出のミュージカル『ANYTHING GOES』に出演、内外で評価され、その後も16年間出演する『細雪』等、舞台や旅番組で活躍。171cm、62kg、A型。
(構成/橋本紀子)
※週刊ポスト2014年10月17日号