北朝鮮による拉致被害者問題は、日本側が北朝鮮から常にのらりくらりとかわされている印象を持つことだろう。外交巧みな彼の国により、安倍政権は騙されていると指摘する作家の落合信彦氏は、苛立ちを隠さない。
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ことは、安倍政権が騙されて済む話ではない。いま日本が北朝鮮に近づくことは、日本が国際的に孤立するリスクを強く孕んでいるからだ。
それには、中韓の接近という要素が絡んでくる。7月に朴槿恵と習近平が会談した際、どんな内容が話し合われたかは定かでない。だが徐々に状況を俯瞰してみれば、韓国からは米軍が徐々に撤退し始めており、その代わりに韓国が中国にすり寄っている現実が浮き彫りになる。
実は米軍は日本からも撤退しつつあるのだが、日本はその現実にすら目を向けようとしない。
東アジアにおける米軍のパワーが弱まり、中国の軍事的プレゼンスが増大するいま、この地域で起きようとしているのは、「米中による太平洋分割統治」の実現である。
米中で環太平洋地域の区域を分けて分割統治するというこの無法な計画は、もとは人民解放軍が言い出したものだった。以前は、米太平洋軍総司令官が訪中した際、人民解放軍の幹部がぶち上げ失笑を買うなど、アメリカ側にとっては笑いの種でしかなかった。
ところが、オバマ政権になって情勢はがらりと変わった。オバマはアジア地域の「リバランス」を掲げたが、それは日韓まで広げていた軍事力をハワイやグアムまで引き上げるということを意味した。それはすなわち、東アジアにおける中国の覇権を黙認するということだ。
つまりオバマ政権は、「米中による太平洋分割統治」を事実上、受け入れようとしているのである。