そこで韓国は、いち早く米国から中国との同盟に鞍替えしようとしているが、それはほんの100年ほど前の姿に戻るだけだ。問題は日本である。アメリカに見捨てられようとしている日本は、あろうことか北朝鮮に接近するという道を進み始めた。
万が一日本に明確な戦略的ビジョンがあると仮定すると、日本は中国封じ込めという目的のためにアメリカと北朝鮮の橋渡し役を担う。北朝鮮はアメリカと交渉したくてたまらず、一方でアメリカにとっては、北朝鮮を手中に収めることで中国が太平洋に出て行く針路を塞ぐことができる。と同時に中国のノド元に”ドス”を突き付けることができる。これこそが中国のパワーポリティクスに対する「パワープレイ」だ。
だが、パワープレイの意味も知らない日本の政治家や官僚がそうした戦略を描けているとは、とうてい考えられない。
それどころかアメリカは、日本が北朝鮮に一部制裁解除したことを怒っている。アメリカはじめ国際社会は、北朝鮮の核実験やミサイル開発に制裁を加えたはずなのに、日本は焦点を拉致問題にすり替えて解除に踏み切ったからだ。このままいけば、日本は北朝鮮に近づく代わりにアメリカを失うという最悪の外交政策に突き進む可能性すらある。
安倍政権が目先の支持率目当てに北朝鮮にすり寄れば、日本は北朝鮮と並ぶ与太者国家の仲間入りを果たすことになろう。安倍は北朝鮮と心中するつもりなのだろうか。
※SAPIO2014年12月号