新語・流行語大賞の「候補語」が発表された。あなたはいくつ知っているだろうか。振り返れば「今年」が見えてくる。コラムニストのオバタカズユキが解説する。
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忙しなく時間の流れが早い。週明けはもう師走で、12月1日(月)には年末恒例のユーキャン新語・流行語大賞の発表がある。
「候補語50語」はすでに発表済みで、その中から「大賞」と「トップテン」が選ばれる。今年の候補語は以下だ。ざっとお目通しいただきたい。
輝く女性/STAP細胞はあります/バックビルディング/まさ土/トリクルダウン/デング熱/ダメよ~ダメダメ/2025年問題/危険ドラッグ/アイス・バケツ・チャレンジ/家事ハラ/マタハラ/ありのままで/レリゴー/こぴっと/ごきげんよう/リトル本田/J婚/ゴーストライター/タモロス/マイルドヤンキー/リベンジポルノ/JKビジネス/絶景/レジェンド/ゆづ/妖怪ウォッチ/塩対応/マウンティング(女子)/こじらせ女子/女装子/号泣会見/セクハラやじ/集団的自衛権/限定容認/積極的平和主義/勝てない相手はもういない/カープ女子/ワンオペ/ハーフハーフ/消滅可能性都市/壁ドン/ミドリムシ/壊憲記念日/イスラム国/雨傘革命/昼顔/塩レモン/ビットコイン/エボラ出血熱
いくつピンと来ただろうか。おおよその意味を説明できる1語あたり2点、100点満点で何点取れたか。もう一度50語をチェックして数えてみよう。
私は初っ端の「輝く女性」で躓いた。「なんだっけ?」と検索したら、そういえばこの春に首相官邸が「輝く女性応援会議」なるものを作っていたのだった。アベノミクス3本目の矢である「成長戦略」の1つとして、女性が輝く日本をつくるために掲げられた「待機児童の解消」「職場復帰・再就職の支援」「女性役員・管理職の増加」といった諸政策。その結果、日本の女性が前より輝いたとはまるで思えないけど、たしかにやたらギラギラしたビジネスウーマンたちが安倍首相を囲んでイエイみたいな写真を一時期よく見かけた。
他はどうか。「バックビルディング」。これも知識として自信がないので検索すると、直線的にそびえ立つビル群のような積乱雲の連なりが発生することを「バックビルディング現象」と呼ぶ。今年は広島他各地で大災害がよく起き、この気象現象が引き起こした「集中豪雨」のニュースをよく見た。なぜより身近な「集中豪雨」を候補語にしなかったのかは不明だが、おかげで「バックビルディング」、今頭に入れたぞ。
しかし、やばい。次の「まさ土」もよく分からない。検索すると、ああ、そうだった。これも広島の集中豪雨のときに解説されていた用語だ。風化した花崗岩からなる土壌のことで水を含むともろくて崩れやすい、という話。関西以西の山などに広く分布しているのだった。
で、「トリクルダウン」。たしか経済用語のはずだが、すらすら説明はできないな。野村証券のサイトに、こうあった。
<トリクルダウン(trickle down)は浸透を意味する英語。トリクルダウン理論とは「富裕者がさらに富裕になると、経済活動が活発化することで低所得の貧困者にも富が浸透し、利益が再分配される」と主張する経済理論。この理論は開発途上国が経済発展する過程では効果があっても、先進国では中間層を中心とした一般大衆の消費による経済市場規模が大きいので、経済成長にはさほど有効ではなく、むしろ社会格差の拡大を招くだけという批判的見方もある。>
そうだった。アベノミクス批判の文脈でトリクルダウン理論は幻想だとする言説が、朝に日経新聞、晩に「ワールドビジネスサテライト」をチェックするのは普通でしょ、というような層の間では話題になったのだった。
「家事ハラ」、「マタハラ」は具体的に何があったんだっけ。前者については、<本サイトでは「男女の家事シェアを促進する」という趣旨で、意欲はあるものの夫の家事がうまくできていない現状を顕在化させる広告表現として‘家事に対する何気ないダメ出し’のことを「家事ハラ」とネーミングして使用しております。>とへーベルハウスの特設サイト「妻の家事ハラ白書」にある。そうだ、この大手住宅メーカーがネットCMで「家事ハラ」を使ったところ、岩波新書の『家事労働ハラスメント-生きづらさの根にあるもの』と逆の意味で使っていてけしからん!とネット炎上したのだった。
後者の「マタハラ」は、「マタニティー・ハラスメント」の略だ。弁護士ドットコムは、<妊娠や出産をきっかけとして働く女性が職場で嫌がらせを受ける「マタニティ・ハラスメント(マタハラ)」について、最高裁判所が画期的な判決を出した。広島県の病院で働いていた理学療法士の女性が「妊娠後に降格させられたのは、男女雇用機会均等法に反する」として、病院側に損害賠償を求めた裁判で、最高裁は10月23日、「妊娠や出産を理由とした降格は、原則として違法」とする初めての判断を示したのだ。>という記事を流している。うん、そう言われれば薄ら記憶がある。