「テロを誘発するかもしれない」という懸念から風刺画掲載を見合わせるという判断は有害だ。ムハンマドの風刺画掲載の是非はテロ問題と切り離して考える必要がある。
筆者は、掲載に反対だ。それは、筆者がプロテスタントのキリスト教徒で、イエス・キリストを誹謗中傷するような記事やキリスト教徒を小馬鹿にするような風刺画が新聞や雑誌に掲載されることに不快感を覚えるからだ。
無神論を国是とするソ連では、マスメディアにそのような記事や風刺画がしばしば掲載されていた。そういう記事や風刺画に接しても、日本大使館の同僚は特に何も感じなかったようだが、筆者は不快だった。
筆者は1人のキリスト教徒として、他の宗教を信じる人が、自らの信仰を侮辱されたと感じるような報道をすることを好まない。
その点からすると、朝日新聞の〈「紙面に載れば大きさとは関係なく、イスラム教徒が深く傷つく描写だと判断した。たとえ少数者であっても、公の媒体としてやめるべきだと考えた」。記事では絵柄を具体的に説明。イスラム教徒の受け止めも紹介した。〉という見解が、筆者の皮膚感覚にもっとも合致している。
※SAPIO2015年3月号