いま私たちは家族の有り様を改めて考える、大きな節目を迎えていると思う。その推進役となっているのが、現在の最高裁判所だ。
この2、3年の間で、最高裁が民法の家族法について大きな判断を下したり、憲法判断をする判決・決定が相次いでいる。
まず最高裁は2013年9月、「遺産分割審判に対する抗告棄却決定に対する特別抗告事件」において、嫡出でない子と嫡出子の法定相続分を同等とし、嫡出でない子の相続分を嫡出子の相続分の2分の1と定めた民法900条4号ただし書を憲法14条の平等原則に反するとして違憲無効にした。
これは従来の最高裁判例を変更する大きな決定で、法務省は民法を書き換えた。妥当な判断だと思う。
さらに同年12月には、「戸籍訂正許可申立て却下審判に対する抗告棄却決定に対する許可抗告事件」という事件について決定が下された。
事件はこうだ。性同一性障害により女性から戸籍変更した男性と、女性の夫婦の間に「子ども」が出来た。子どもは妻が第三者から体外受精して授かったものだった。しかし出生届を受けた区役所が、子どもは性同一性障害で女性から男性になった人物の実子ではないことが明らかとして、「父親」欄を空欄にした。この人物が子どもの戸籍欄に自分の名前を記載するように求め、最高裁はそれを認めた。
もともと性同一性障害者は、平成16年に施行された「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」によって、しかるべき要件を備えた場合は、戸籍の性別を変更して以降、その性別としてみなすことになっている。実子でなくとも、戸籍欄に「父」と記載したい気持ちは当然であり、これも妥当だろう。
2つとも最高裁は訴えた側の主張を認めた。通底するのは家族観の実態を見据え、古い家族観から脱却しようとする姿勢である。
寺田逸郎・最高裁長官は今年の年頭所感で、
「家族の在りようの多様化も,少子高齢化の進展と相まって,解決困難な事件の増加をもたらしています。施行から3年目を迎えた家事事件手続法に基づく実務の運用の定着を図りつつ,法的観点を踏まえた紛争解決機能の充実に向けた取組を引き続き強化することに努める必要があります」
と語って家族問題について取り組む姿勢をにじませた。その言葉通り、最高裁は今年2月中旬に「夫婦の別姓は認めない」「女性は離婚後6カ月間は再婚できない」という規定について争われている裁判で、大法廷で審理することを決めた。両規定について初めて憲法判断するものと見られている。
こうした動きについて保守派からは、「夫婦別姓を認めれば夫婦の一体感が失われる」という反対意見がある。
何十年前の感覚だろうか。少なくとも仕事面では、結婚しても旧姓のまま働き続ける女性は多い。私の妻もそうだ。というか、結婚を機に名刺の名字を変えました、という女性を私は知らない。私の周りの話をして恐縮だが、大方の読者の「周り」もそんな感じではないか。それで「お前の家庭の一体感は失われていないのか」と訊ねられれば黙って俯くしかないが、それは私の家庭の個別的事情で夫婦別姓とは関係がない。