そもそも「夫婦別姓」はわざわざ最高裁の憲法判断を仰ぐより、国会が立法的に解決すべき問題ではなかったか。公明党の山口那津男代表が「夫婦別姓」について、
「判決が下ってから動くのではなく、改正へ向け政治が自覚的にどうするか議論すべきだ。(選択的夫婦別姓を)肯定的に考えている」(日経新聞2月24日)
と語ったのは、全く正しい態度である。
家族関係を取り巻く法律で、「最後の山」といえるのが同性婚だろう。3月、渋谷区は同性カップルを結婚に相当すると認め、パートナーとして証明する条例案を区議会に提出した。全国の自治体で初めての試みである。世田谷区も前向きな姿勢を示している。
世界的には同性婚を認めたり法的保護を与える国がオランダ、アメリカの一部の州などに広がっており、ベトナムでも同性婚を禁じた法律を撤廃、容認への姿勢を打ち出している。
だが安倍晋三首相は同性婚について、「現行憲法の下では、同性カップルの婚姻の成立を認めることは想定されていない」と述べた。(朝日新聞2月18日)
これは憲法24条1項の「婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立し」という文言を念頭に置いての発言とみられる。
では憲法は安倍首相の言う通り、同性婚を認めていないのだろうか。同性婚について裁判所が憲法判断を下したケースはまだない。だが憲法24条の立法趣旨が家父長制度の否定を主眼としていること、憲法13条で「個人の尊重」を規定していることなどから、憲法24条が同性婚を「禁止している」とまでは言えない、という学説もある。つまり、民法を改正して同性婚を認めたとしても憲法違反ではない。
「家族」は社会の最少の組織単位であり、さまざまな形のファミリーが生まれることは、この社会の多元的な価値観、豊かな生き方の土壌になる。立法府の前向きな決断を待ちたい。
●文/神田憲行(フリーライター)