2011年9月に1ユーロ=1.20スイスフランという為替上の上限を設け、無制限介入を続けていたスイス国立銀行(中央銀行)が突然、この対ユーロ上限を撤廃。スイスフランが短時間に30%も急騰し、為替市場は混乱状態に陥った。
その余波を受け、金市場でも米ドル建て金価格が日本時間18時台から急騰し、上値を切り上げて一時1260米ドル台に達した。金価格は年始からじわじわと高まりをみせていたが、1250米ドルを超えられないでいた。しかし、このスイスショックで上昇に拍車がかかり、心理的な節目である1250米ドルのラインを上抜けたのである。
その後、押し戻されたものの、注目すべきは、この日を境に金ETF(上場投資信託)に流れる資金が急増した点だ。1月15日から3営業日連続で金ETF市場に大きな資金の流入があり、2月上旬に至るまで増加を続けた。たとえば、代表的な世界最大級の金ETF『SPDRゴールド・シェア』の保有残高をみると、今年1月だけで50トン強も増えている。これは2011年11月の55トン増以来の規模となる。
このような金ETFの増え方は、中長期の資金の流入を意味する。投資マネーが短期で流出入するNY金先物市場でポジションが増えるのとは意味合いが異なるのだ。金ETFの保有残高が増えていることは、中期的な金相場は強気とみることができる。
今回、金ETFを買っているのは欧州系の年金基金の他にヘッジファンドの参入も考えられる。基本的に金ETFは金現物と同様、短期売買で投資する対象ではない。短期狙いならば金先物市場に向かうはずだ。金ETFの残高の増加はある意味、金の信頼度が高まっていることを物語っているともいえる。
※マネーポスト2015年春号