順天堂大学医学部・消化器内科で糞便移植の臨床研究責任者を務める石川大・助教がいう。
「腸内細菌の解析技術が近年飛躍的に進歩したので、世界中で糞便移植が研究されています。特に肥満と、潰瘍性大腸炎のような炎症性腸疾患の分野での研究が進んでいます」
アメリカでは、“うんこバンク”ともいうべき「便移植財団」も立ち上げられている。便移植財団は、いろいろな人種の糞便を収集し、DNA解析を行なうことで膨大なデータを蓄積しているという。
また、アメリカの非営利団体「OpenBiome」は、糞便移植のための便サンプルを1回分あたり40ドル(約4800円)で買い取っている。週に5回提供すれば、ボーナスとしてさらに50ドルもらえる。ただし“非常に健康で良質な”便でなければ買い取ってもらえず、提供希望者の4%しか通れない“狭き門”だ。
糞便移植の研究は日進月歩だ。前出の石川氏は将来の可能性をこう語る。
「腸内環境はまさに十人十色で患者ごとに違います。今後は糞便に含まれる腸内細菌のどれが何の病気に関連するのかという解明もされるでしょう。その結果、患者さん一人ひとりの体質や持病に合わせた、オーダーメイドの『腸内細菌カクテル』を作って移植できる日が来るかもしれません」
糞便移植による様々な病気の治療の研究は始まったばかりだ。もし潰瘍性大腸炎への効果がはっきりすれば、安倍首相の悩みは1つ減るかもしれない。
※週刊ポスト2015年3月20日号