そもそも経済成長の鈍化は、いまに始まった話ではない。5年近く鈍化してきた理由は、見かけの成長よりも構造的な改革を優先させるという構造調整が進んでいるからである。その中身は次のように大きく3つに分けられる。
【1】不動産バブルの調整
中国政府はこれまで4年以上かけて不動産価格を下げる抑制策を繰り返してきた。不動産価格が低迷しているのが何よりの証拠で、その効果がようやく表われたと見ていいだろう。
【2】生産過剰産業の淘汰と戦略的新興産業の育成
鉄鋼やセメント、非鉄など重厚長大産業を中心に生産過剰が問題視されてきた。これがコントロールされつつあることは、設備投資が伸びていないことからも明らかといえる。一方で、国家戦略である「第12次5か年計画(2011~2015年)」で定められた省エネ環境やエネルギー、IT、バイオといった戦略的新興産業は着実に育ちつつある。新興企業のウェイトが高い深セン総合指数が、重厚長大産業中心の上海総合指数よりも強い値動きとなっているのは、その証左だろう。
【3】加工貿易からの脱却、資本財中心の輸出構造への転換
従来の加工組み立てを中心とした輸出から、より付加価値の高い機械をはじめとした資本財中心の輸出構造へと転換を図り、貿易構造のレベルアップを進めている。
習近平政権はこれら旧来の構造がもたらしてきた非効率な経済体制にメスを入れ、それがようやく実を結ぼうとしているのが現状である。
※マネーポスト2015年春号