全国に約140か所の大型ショッピングモールを有するイオン。1日の大半をイオンで過ごす“イオニスト”が急増するなど、その盛況ぶりは当サイトでも度々報じてきたが、イオン本体の業績は低迷続きだ。
4月9日に発表された2015年2月期決算によると、売り上げこそ過去最高の7兆円超えを果たし、巨大流通グループの強さを見せつけたものの、本業の儲けを示す営業利益は前期比17.5%減の1413億円で、3期連続の減益となった。
不振の要因は何なのか。流通アナリストでプリモリサーチ代表の鈴木孝之氏に決算資料を読み解いてもらうと、イオンの「弱点」が次々と浮かび上がってくる。
「いまイオングループの経営を支えている大黒柱は、イオン銀行を核にクレジットカード事業や住宅ローンビジネスなどを展開する総合金融事業と、イオンモールの開発及びテナントへの賃貸業で成り立っているディベロッパー事業の2部門。つまり、非小売り事業が稼ぎ頭になっているのです。
一方、業績の足を引っ張っているのは、食品スーパー事業と衣料品・家庭雑貨などを扱うGMS(総合スーパー)事業。いずれもイオンの祖業である物販が収益力の低下で振るわないという皮肉な状況に陥っています」
各地で賑わうイオンモールの中にも、イオンのPB(自主企画商品)「トップバリュ」を中心に、食料品から雑貨、家電まであらゆる商品の品揃えがあるイオンスーパーが必ず入っているが、そこは素通りしてしまう消費者がいるのは事実だ。
「モールに行くときは、洋服や靴など買いたいものはすべて専門店で揃うので、わざわざイオンのスーパーは見ないで帰ることが多い。広い売り場で何でも売っているけど欲しい物はあまりないイメージ。日頃食べる食材も近所の食品スーパーで買うほうが慣れていますしね」(千葉県在住の40代主婦)
イオンもこうした消費者の声に応えるべく、トップバリュ商品の品質改善や、イオンペット(ペットショップ)、イオンバイク(自転車販売)を子会社化でスピンアウトしたように売り場の専門店化でGMS事業強化を急いでいる。
また、食品スーパーは傘下のカスミ、マルエツ、マックスバリュ関東の食品スーパー3社を経営統合させたUSMH(ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス)が誕生。その他、ダイエーの食品売り場を消費行動の変化に合わせた「ライフスタイルストア」にする方針を掲げるなど、規模を活かした反転攻勢に余念がない。