そして、イオンが中期的な経営戦略として重要視しているのが「都市シフト」だ。
「イオンの根本的な弱さは、首都圏をはじめ大都市部に拠点が極端に少ないこと。いくら郊外型の店舗やモールを新たに作ろうとしても、採算の取れそうな立地はさほど残っていないうえに、人口流出や高齢化で先行きは明るくありません。
そこで、系列のコンビニ『ミニストップ』や『まいばすけっと』、『アコレ』、そしてウェルシアをはじめとしたドラッグストア店舗と、あらゆる業態を結集させながら都市部の大攻略作戦を仕掛けています」(前出・鈴木氏)
イオンモールも昨年末に開業した「イオンモール岡山」や、今年3月にオープンした「イオンモール旭川駅前」を例にとれば、隙あらば都市部の駅チカへの進出を狙っていることは明らかだ。
では、これまでイオニストたちの憩いの場となってきた郊外型のモールはどうなってしまうのか。
「既存のモールは増床や改装を繰り返しながら顧客に飽きられないようにしていくでしょう。将来的には介護施設や病院、健康に焦点を当てた高齢化対応型のスポットに生まれ変わる可能性だってあります。
単に商業施設といっても、それぞれ地域特有のマーケットや消費者ニーズを汲んだものにしなければ生き残りは厳しい。あらゆる業種の企業を買収しながら大きくなったイオンだけに、いかに地域特性に合わせた事業集約や効率化ができるかが最大の課題なのです」(鈴木氏)
“巨艦”ゆえの壁にぶち当たっているイオン。なにはともあれ、まずは原点である小売り業の看板を取り戻すことが先決だろう。