武田:あと、『役者は一日にしてならず』を読んでいますと、幼いころ、きゃしゃで体が弱かったりという人が多いですよね。私もそうだったんです。もともと結構ちっちゃくて、すぐ脱臼しちゃう子で。手を引っ張られただけで脱臼しちゃうぐらい。弱くて、運動神経もすごく悪かったんですよ。でも、そういう人でも頑張ったら鍛えられるというか。そういう部分にシンパシーを感じました。
春日:必ずしも子供のころから日の当たるところにいて、それでこの世界に流れていったというわけではないんですね。
武田:そうじゃないですね。空手でもそうなんですけど、いつも優勝する方に「ちっちゃいころから凄かったんですか」って聞いたら、「いや、もともとひ弱で、何も運動とかもできない子だったんです」と言う方が多くて。
春日:そういうのって何かあるんですか、反動というか。
武田:何ですかね。多分反動ですよね。タイのジージャーっていうアクションスターがいるんですけど、あの方ももともとすごい体が弱くて、ちっちゃいころから。でも、テコンドーを始めてチャンピオンになったという話を聞いて、そういう方は多いんだなって。
春日:そういえば勝野洋さんも喘息持ちだったとおっしゃっていました。体が子供のころから強くなかったから、父親に柔道をやらされて、そこからあの肉体を作り上げていった、と。あの人、それこそその後、「ファイト一発!」のCMで真田広之さんとスタントなしでアクションまでやるようになってますからね。
武田:そういうコンプレックスを抱えているからというのもあるんでしょうね。私もコンプレックスから入ったので。
春日:ご自身の中でコンプレックスを周囲に感じさせない努力があったりするんですか。
武田:私は不器用なのがコンプレックスで、現場で迷惑をかけてしまうときもあるんですけど。でも、「その不器用さが武器になるよ」って言っていただけて。「アクションが完璧過ぎると、次こういうの来るんだなっていうのがすぐわかっちゃうし、面白味がない」と。私はできるか、できないか、ぎりぎりのところでいつも戦っているので、見ていてちょっと危機感を感じてもらえるんじゃないかと思います。
春日:不器用だから考えるだろうし、工夫もしますからね。
武田:スタントマンの方たちが合間を縫って教えてくれるのは、一番心強いですね。そういう方たちがいないと自分はいないと思っているので。私だけじゃなくて、ほかの女優さんとか俳優さんのときもそうなんですけど、自分たちが間違えても、怒られるのは絶対スタントマンとか絡みの方たちなんですよ。何か、すごいなって思いますね。こっちがいけない、間違えているのに、何でいつも責任を持つのはアクション部の人たちなんだろうって。でも、そういうのがあって現場は成り立っているので、一番はスタントマンの方たちが支えてくれているというのは感じます。
春日:伺っていると、武田さんも要所要所でいろんな先輩からいい言葉をいただいていますよね。
武田:ほんとにそうですね。先輩方の背中を見て……という感じですね。
春日:共演してきた中で印象的な言葉をいただいた先輩はいますか?
武田:松崎しげるさん。
春日:おーっ!
武田:映画を試写で見終わった後に「どうだった?」って聞かれて、「おもしろかったですけど、個人的には自分のシーンでもっとこうしたらよかったなっていうのはありました」って言ったら、「そうじゃなきゃいけないんだよ」って。
「役者もアーティストも、今生き残っている人はずっとそれを感じていた人だけだから。もっとこうすればよかったって思わなきゃ、成長できないし、よかったって満足しちゃう人は上には上がってこられないから」っておっしゃられて。それを聞いたときに、「これでいいんだ」って思いましたね。