これまでにも逆風とされた選挙はあったが、橋下氏は「自分への信任投票だ」と呼びかけたり、選挙戦終盤で「敗北宣言」して同情票を集めるなどの離れ業を見せたりして、苦境を打開してきた。
翌10日のタウンミーティングでは、各地で泣き落としに出た。自民党議員と日本共産党議員が街宣車を並べて演説会を開くなど、反対派が異例の結束を見せていることに触れ、
「やっぱり組織票はすごい。このままでは負けます。都構想か今のままか。どちらに未来を感じるか。可能性に賭けて、一歩を踏み出してください」
と、訴えかけていた。しかしそうした“神通力”も確実に薄れつつある。大阪在住のジャーナリスト・吉富有治氏が語る。
「はっきりいって、大阪市民からすれば“またか”という感じです。もうこうした橋下流の戦術に市民は飽きて、目新しさをなくしてきている。“投票日までにまた何かパフォーマンスやるんやろうな”と、見守っている状態で驚きがありませんでした。選挙戦における橋下さんのパフォーマンス自体は、住民の票を動かすことにはならなかったと思います」
むしろ反発のほうが強くなっていたというのは、前出の在阪記者だ。
「橋下氏は反対運動に回る地域団体には補助金停止をちらつかせる高圧的な手段を取った。露骨な政治的手法に不満が出ていたのも事実です」
※週刊ポスト2015年5月29日号