「円安」で食品関係の値上げラッシュが続く。食文化に詳しい編集・ライターの松浦達也氏が解説する。
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今年、食品の価格が次々に引き上げられている。理由は言わずもがな。世界的な需要増加に伴う食品価格の高騰に加え、円安が進行。輸入食材を中心に仕入れ価格が高騰し、これまでの価格の維持が難しくなったからだ。
年初からの動きをまとめると、まず1月に麺類が値上げを行った。即席麺の主要メーカー、日清食品、東洋水産、サンヨー食品などが一斉に即席麺の値上げに踏み切り、日清フーズ、日本製粉、昭和産業がパスタの価格を家庭用、業務用ともに引き上げた。小麦はその多くを海外からの輸入品に頼っており、円安の影響をまともに受けた形だ。
2月は冷凍食品。味の素冷凍食品、テーブルマーク、ニチレイフーズなどが家庭用冷凍食品の価格を改定。冷凍食品は3月にも他メーカーも後を追った。同月にはアイスクリームもハーゲンダッツやロッテなど数社が一斉値上げ。4月にはカゴメとキッコーマンがトマトケチャップやトマト加工品を。さらに各乳業メーカーがバターやチーズを値上げした。
そしてこの7月、さらなる値上げラッシュがやってくる。象徴的なのはチョコレートで、ロッテが「ガーナ」「クランキー」など主要8品目を、森永製菓も「ダース」「小枝」など10品目を値上げする。明治にいたっては10品目を値上げし、14品目について容量減量と、24品目について事実上の”値上げ”をおこなう。
全国菓子卸商業組合連合会の総会で理事長が「中小メーカーも恐れずに値上げに踏みきってほしい」と発言したことで、他メーカーの追随も予想される。消費者にとってはうれしくないトレンドかもしれないが、チョコレートはこの数十年、もっとも値上げの少ない食品のひとつ。ロッテにいたっては、1974年以来41年ぶりの値上げであり、デフレ脱却を象徴するできごとのひとつともいえる。