中国政府に抗議する民主派学生が昨年、香港で展開した座り込み占拠活動「雨傘革命」には世界が注目したが、年末に香港警察によって強制排除されてからはこの問題が大きく報じられることはなくなった。
しかし、民主派と当局の対立はむしろ高まっている。習近平・国家主席は民主派メディアへの弾圧を強め、さらに人民解放軍の投入も厭わない構えだ。民主化運動に身を投じた学生たちが人民解放軍の武力弾圧によって命を奪われた天安門事件(1989年6月4日)から26年。「第2の天安門事件」が目前に迫る緊迫の現場からジャーナリストの相馬勝氏がレポートする。
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民主化運動の焦点が行政長官選挙だ。香港ではこれまで1200人の各界代表で構成される選挙委員会が長官を選んできた。過半数を獲得すれば当選だが、同委は親中派色が強く、民主派候補が当選することは事実上不可能だ。
それに対して、新たな選挙法案は市民約350万人に選挙権が与えられる「自由選挙」が建て前だ。しかし、立候補者は、「選挙委員会」の看板をかけ替えただけの「指名委員会」委員の過半数の推薦を獲得しなければならないことにされたため、民主派は立候補する前に親中派から排除されてしまう。民主派はこれを「ニセ選挙」と呼んで、法案を押し付ける習近平指導部を激しく批判している。
法案の可決には立法会議員70人中、3分の2の47人の賛成が必要だ。民主派議員が27人を占めるため、常識的に考えれば法案は否決されるはずだが、中国側が民主派の切り崩しにかかっている。4人が賛成に回れば、親中派が逆転する。しかも法案が否決されても選挙方法は現状のままだから、長官に親中派候補が選ばれるのは確実。いずれにしても民主化は進まない。
香港の中国系テレビ局ATVの劉瀾昌・高級副総裁(報道・広報担当)は「来年は立法会選挙が、2017年には長官選挙が行なわれるだけに政治的混乱は避けられない。経済にも大きく影響し、最悪の場合、香港経済は今後10年間、低迷することも考えられる」と悲観的だ。