香港で第2の発行部数を誇る「蘋果日報(通称・リンゴ日報)」の創始者で、香港の民主化運動のバックボーン的存在として知られる黎智英(ジミー・ライ)氏は「すでに、昨年の雨傘革命によって香港の問題点が明らかになっており、これを解決しなければ、再び若者が決起し、香港は統治不能になるだろう」と予測するが、そうなれば中国政府による軍導入の選択肢も否定できない。

 昨年の雨傘革命が盛り上がる最中に行なわれた党中央委員会第4回総会(4中総会)で習近平氏は「香港を中央の管轄から離脱させようとしている者がいる。我々はそれに絶対に応じられないし、絶対に実現しない」と演説し、徹底的に叩きつぶす方針を掲げた。

 実際、演説を受けて党指導部は香港に隣接する広東省深セン市に党政治局常務委員をトップとする危機処理グループの本部を置いて人民解放軍、武装警察の幹部を常駐させ、昨年12月の強制排除を実現させた。

 現在も、引き続き香港の周囲には人民解放軍が即応態勢を整えて集結している。選挙法案そのものが武力を背景に押し通されようとしているのである。

 再び香港で民主化運動が盛り上がれば、すでに強制排除を“予行演習”した習近平指導部は力による解決をためらわないだろう。香港で「第2の天安門事件」が起こる可能性は確実に高まっている。ライ氏が民主派メディアを立ち上げるきっかけとなった天安門事件が、「自由と尊厳」を体現していたはずの香港で繰り返されることを防ぐのは、香港人の強い意志と、世界の監視・批判の目である。

※週刊ポスト2015年6月19日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

10月には10年ぶりとなるオリジナルアルバム『Precious Days』をリリースした竹内まりや
《結婚42周年》竹内まりや、夫・山下達郎とのあまりにも深い絆 「結婚は今世で12回目」夫婦の結びつきは“魂レベル”
女性セブン
騒動の発端となっているイギリス人女性(SNSより)
「父親と息子の両方と…」「タダで行為できます」で世界を騒がすイギリス人女性(25)の生い立ち 過激配信をサポートする元夫の存在
NEWSポストセブン
宇宙飛行士で京都大学大学院総合生存学館(思修館)特定教授の土井隆雄氏
《アポロ11号月面着陸から55年》宇宙飛行士・土井隆雄さんが語る、人類が再び月を目指す意義 「地球の外に活動領域を広げていくことは、人類の進歩にとって必然」
週刊ポスト
九州場所
九州場所「溜席の着物美人」の次は「浴衣地ワンピース女性」が続々 「四股名の入った服は応援タオル代わりになる」と桟敷で他にも2人が着用していた
NEWSポストセブン
初のフレンチコースの販売を開始した「ガスト」
《ガスト初のフレンチコースを販売》匿名の現役スタッフが明かした現場の混乱「やることは増えたが、時給は変わらず…」「土日の混雑が心配」
NEWSポストセブン
希代の名優として親しまれた西田敏行さん
《故郷・福島に埋葬してほしい》西田敏行さん、体に埋め込んでいた金属だらけだった遺骨 満身創痍でも堅忍して追求し続けた俳優業
女性セブン
佐々木朗希のメジャーでの活躍は待ち遠しいが……(時事通信フォト)
【ロッテファンの怒りに球団が回答】佐々木朗希のポスティング発表翌日の“自動課金”物議を醸す「ファンクラブ継続更新締め切り」騒動にどう答えるか
NEWSポストセブン
越前谷真将(まさよし)容疑者(49)
《“顔面ヘビタトゥー男”がコンビニ強盗》「割と優しい」「穏やかな人」近隣住民が明かした容疑者の素顔、朝の挨拶は「おあようございあす」
NEWSポストセブン
歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
天皇陛下にとって百合子さまは大叔母にあたる(2024年11月、東京・港区。撮影/JMPA)
三笠宮妃百合子さまのご逝去に心を痛められ…天皇皇后両陛下と愛子さまが三笠宮邸を弔問
女性セブン
胴回りにコルセットを巻いて病院に到着した豊川悦司(2024年11月中旬)
《鎮痛剤も効かないほど…》豊川悦司、腰痛悪化で極秘手術 現在は家族のもとでリハビリ生活「愛娘との時間を充実させたい」父親としての思いも
女性セブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン