香港で第2の発行部数を誇る「蘋果日報(通称・リンゴ日報)」の創始者で、香港の民主化運動のバックボーン的存在として知られる黎智英(ジミー・ライ)氏は「すでに、昨年の雨傘革命によって香港の問題点が明らかになっており、これを解決しなければ、再び若者が決起し、香港は統治不能になるだろう」と予測するが、そうなれば中国政府による軍導入の選択肢も否定できない。
昨年の雨傘革命が盛り上がる最中に行なわれた党中央委員会第4回総会(4中総会)で習近平氏は「香港を中央の管轄から離脱させようとしている者がいる。我々はそれに絶対に応じられないし、絶対に実現しない」と演説し、徹底的に叩きつぶす方針を掲げた。
実際、演説を受けて党指導部は香港に隣接する広東省深セン市に党政治局常務委員をトップとする危機処理グループの本部を置いて人民解放軍、武装警察の幹部を常駐させ、昨年12月の強制排除を実現させた。
現在も、引き続き香港の周囲には人民解放軍が即応態勢を整えて集結している。選挙法案そのものが武力を背景に押し通されようとしているのである。
再び香港で民主化運動が盛り上がれば、すでに強制排除を“予行演習”した習近平指導部は力による解決をためらわないだろう。香港で「第2の天安門事件」が起こる可能性は確実に高まっている。ライ氏が民主派メディアを立ち上げるきっかけとなった天安門事件が、「自由と尊厳」を体現していたはずの香港で繰り返されることを防ぐのは、香港人の強い意志と、世界の監視・批判の目である。
※週刊ポスト2015年6月19日号