ここで言及するのも情けないが、本物の総選挙で選ばれた政治家たちが自分の言葉をもっていない。安保法制の国会で自分の言葉で説明できない。「国民の理解が浸透しない」と嘆いているが、毎度毎度役人が作った文章を読み上げるだけでは、理解しようにもできるわけがなかろう。国会で答弁に立つたびに、後ろから中腰でやってきた秘書官らしき人物から渡された紙を読むだけの姿勢が目立つ。
やたら前に出たがる安倍首相も今までの話を繰り返すか、出てきて自信満々に紙を読む。いっそ、紙持ってきた奴にそのままマイクを渡せ。民主党の辻元議員に質問された中谷防衛大臣が紙を読み上げると、辻元議員が、
「中谷さん、自分の言葉で語ってくださいよ」
と、残念という表情を浮かべていた。
4日の衆議院憲法審査会で、参考人に呼ばれた3人の憲法学者が揃って「集団的自衛権は違憲」と明言したことが大きなニュースになった。その中で小林節・慶応大名誉教授が、武器弾薬を運ぶことは武力行使の一体化にならないという政府の主張に対して、
「長谷部先生が銀行強盗して、僕が車で送迎すれば、一緒に強盗したことになるでしょう」
と批判したのは、非常にわかりやすく、説得力のあるたとえだった。憲法学の泰斗が2人揃って銀行強盗するシーンまで頭に浮かんだ。
いまのところ答弁する側が自分の言葉で語ったのは、例の「早く質問しろよ」しかない。
選挙権の年齢が18歳までに引き下げられる。言葉を持たない政治家が、言葉を持つ世代になにを語れるのだろうか。