2014年10月、セブン-イレブンが『セブンカフェ ドーナツ』の販売を開始。さらに、ローソン、ファミリーマート、サークルKサンクスも追随し、空前のコンビニドーナツ戦争が勃発! セブン-イレブンは、東東京地区では1日平均約120個を販売し、全国展開が完了する2016年度は、累計6億個、600億円の販売を目標としている。相乗効果で、ミスタードーナツも6年ぶりに売り上げを伸ばした。そこで、コンビニジャーナリストの吉岡秀子さんに、なぜ今ドーナツなのか? コンビニ各社の狙いについて、分析してもらった。すると、ミスドと形状がそっくりにした狙いも明らかに…。
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コンビニには、おにぎりやパン、お弁当などを買いに行く人がいちばん多く、忙しいのは朝昼晩の食事どきです。そのため、コンビニでは、1日3回「食」の商品が配送されます。ドーナツの登場は、コーヒーとの買い合わせ目的だけでなく、このピーク時以外の「おやつタイム」にコンビニが参入してきたということ。ランチタイムが終わった14~16時ころ、お客さんが少し減り始める時間帯の集客を狙った商品と言えます。
世間では既に、店頭で挽いたコーヒーをドリップする「コンビニカフェ」という文化が浸透していたので、そこにおやつとしてドーナツがうまくマッチしました。もちろんコンビニ側には、コーヒーに加えてドーナツも一緒に買えば、購買数が2点に増えるというメリットがあります。コーヒーしか買わなかったお客さんが、一緒にドーナツを買うケースもある。昼下がりのマグネット商品(消費者を惹きつける魅力のある商品のこと)としての役割も見事に果たしています。
また、昨年コーヒーが大ヒットしたので、「次は何かな?」という消費者の期待もありました。消費者に近いコンビニは、来店のリピート率が命。お客さんに何度も足を運んでもらってこそビジネスが成り立つ。だから、常に世の中に新しいものを発信し続けなければいけない。それがコンビニの宿命です。次のブームの仕掛けこそ、ドーナツだったんですね。
実はドーナツは扱いが難しい商材。空気に触れると劣化してしまい、パサパサになり、油がまわってしまう。できたてはおいしくても、そうなるともう台無しです。それでもおいしく消費者に届けるのが、各社腕の見せどころ。
セブン-イレブンは、専用工場で1日2回揚げ、ドーナツによって配送時の包装を変えています。ざくざくしたオールドファッションは生地から出る余分な水分を外に逃がす包装に。ふんわりした食感のホイップ系ドーナツは、水分をキープするフィルム包装。もちもちいちごリングドーナツは、フィルムと紙で一部通気性をよくして、余分な水分だけを逃し、もっちり感をキープする包装に。
各店舗には製造後3時間以内に届け、レジ横にある什器で温度や湿度を一定に保ちながら保存します。子供から大人まで食べやすい、万人受けする王道の味にもこだわって開発しています。また、東と西でフレーバーを変えている商品があるのもおもしろいですね。関西で人気の白バラ牛乳や抹茶、ミルクコーヒーのチョコを使うなど、ユニークな味にも挑戦しています。