参院平和安全法制特別委員会での採決が迫った9月16日夜、鴻池祥肇・委員長のいる理事会室の前には採決に抗議する野党議員が集まり、与党議員や秘書も入り乱れての大混乱、鴻池氏が理事会室を出られない状況となっていた。
その中で“最前線”に立ったのがピンクのハチマキを頭に巻いた女性議員の集団だった。ハチマキには「怒れる女性議員の会」とあり、民主党の辻元清美氏、小宮山泰子氏、社民党の福島瑞穂氏、共産党の池内沙織氏など超党派の女性議員たちが顔を揃えていた。
集まりを呼び掛けた一人である民主党の神本美恵子・参議院議員の公式HPには〈20人以上が集まり、30本用意したハチマキが足りなくなるほどでした〉とある。委員会質疑で女性の参考人、公述人がいなかったことを問題視して集まった会だというが、そんな彼女たちが巻き起こしたのが「セクハラ騒動」だった。
理事会室前の野党議員たちを与党側が排除しようとしたところ「セクハラだ!」という怒声が飛んだ。
〈与党議員が封鎖を解除しようとすると、「セクハラだ。懲罰だ」などと絶叫した〉(読売新聞、9月17日付)
〈野党側は女性議員を理事会室前のドアに多数配置し、排除しようとする与党議員に「触るな!セクハラだ!」などと抵抗〉(産経新聞、同)
などと報じられた。
女性議員を最前線に配置したこと自体、「与党側が排除しづらいだろうという読みがあった」(大手紙政治部記者)とされる上、満員電車のような混乱の中での接触を「セクハラ」と称す“戦術”を用いたとすれば許されることではない。セクハラ訴訟に詳しい馬場(うまば)龍行・弁護士がいう。
「セクハラは非常にセンシティブな案件です。世の中には弱い立場にいることを利用され、セクハラで嫌な思いをしている女性がたくさんいます。今回のように、別の目的達成のためにセクハラという言葉を利用する構図には、大きな問題があります。
そもそも、混乱の中で不可避な接触があっただけではセクハラは成立しません。安易に持ち出すことに、強い違和感を覚えます」