寝かせておくのが経済にとっての一番の無駄、非効率です。その最たるものが失業です。人材という、経済において最も重要で貴重な資源を、働く意欲があるのに遊ばせておくというのは経済における最大の損失です。
大恐慌では、その失業が25%にも及んでいた。それがケインズが直面した問題なのです。しかも、人間は失業が長く続くと腐ってしまいます。意欲も、能力も。だから、何としても失業、とりわけ長期的な失業は回避するべきなのです。
近年でいえば、リーマンショック直後はそのような状況に近かったでしょう。しかし、現在の日本の失業率は最低水準の3%。まったくその必要はありません。
1990年以降のバブル崩壊においては失業率が上昇しましたが、それに対して取られた景気対策は、旧来の経済構造に基づいたものや一時しのぎの仕事で、その年の雇用とはなっても次の年にはつながらず、長期の見通しが立つ仕事、雇用にはならず、経済は停滞したままでした。悪循環で翌年も一時しのぎの仕事を財政出動で編み出し、経済構造の転換は図られず、借金だけが膨らみました。
社会保障による歳出拡大は大きいとはいえ、それらは必要性があるといえばあります。一方、景気対策と称する財政出動は、むしろ経済を過去に引き戻すマイナスのモノであり、百害あって一利なし、すぐに止めるべきものです。
●小幡績(おばた・せき):1967年生まれ。1992年東京大学経済学部卒、大蔵省(現・財務省)入省、1999年退職。2003年より慶應義塾大学大学院経営管理研究科准教授。『円高・デフレが日本を救う』など著書多数。
※週刊ポスト2015年10月9日号